スポーツジムで働くトレーナーblog

フィットネスクラブでパーソナルトレーニングをしているトレーナーです。トレーニング関連の話、フィットネス業界の話、健康関連の情報・ニュースなどについて書いています。

改めて「RICE処置」を考える

RICE(ライス)処置という言葉はフィットネスクラブに務めている人や何らかのトレーナー系の資格を持っている人であれば

ほぼ100%の確率で知っているはずの言葉です。

 

ケガが発生した際の緊急対応について行うべき処置の

頭文字を取って並べたものです。

R Rest(安静)

I   Icing(冷却・アイシング)

C Compression(圧迫)

E Elevation(挙上)

の4つです。

挙上というのはイメージがしにくいかと思いますが、足の捻挫などの際に横になってもらい、患部を少しだけ高いところに保つようにする(心臓より高いところへ) というものです。

 

スポーツの現場ではケガというのはしょっちゅう起こるものですが、フィットネスクラブの場合は、それほど大きなけがが発生するようなことは起こらないことが大半です。特にウエイトトレーニングの場合は、バーベルやダンベルを落とすと本当に命にかかわるくらいのケガをする重量で行うという場合もあるので、トレーニング時にはみんな細心の注意を払います。

クラブ内でケガが起きるのはプールサイドやお風呂で転倒などの水回りと、ランニングマシンでの転倒が多いです。

 

さて、このライス処置ですが、「ケガをした時はこれ!」というものとして捉えていると、「ケガにはライス処置が有効!」だと、どうしても考えてしまいがちです。

ライス処置というのは「ケガに有効」というポジティブなものではないのです。

 

むしろ

「ライス処置をしなかったらもっと深刻なことになる!」とか

「ライス処置に反することをすると傷病を悪化させることになる」という

ネガティブなものだと考えるべきです。

 

仮に足首をひねってしまった人が目の前にいるとして、その人に

ライスとは真逆のことをしたらどうなるでしょうか?

 

安静にしない、つまり「運動」です。

ケガしたところを動かしてもらったり、他動的に動かします。

 

アイシングの反対、つまり「温め」です。

患部にカイロを当てたり、ヒーターの前に患部を持って行ったりします。

 

圧迫の反対、これは「開放」ということになるのでしょうか?

患部に対して「特に何もしない」ということです。

 

挙上の反対、「下制」です。さらに低いところへ患部を下げます。

 

細かい説明をそれぞれ書いていってもいいですが、

こうやって書き出すだけで、もうけがが悪化することは明白です。

 

ライス処置は「すると良い」のではなく「しなきゃヤバい!」「しないと今よりも悪い状態になってしまう」というものだということですね。

プロテインはトレーニング後よりも前とトレーニング中?

「トレーニング後30分以内のプロテイン摂取が筋肉をつけるためには有効」

という言葉は、聞き飽きるほど聞いたというくらいの言葉です。

 

改めて言葉にして書くともっともらしく聞こえますが、

「運動すると汗をかくので、運動後は水分を摂取すると良い」と言っているのと同じくらい、「まあ普通」といった表現です。

 

「トレーニング後30分以内」という言葉がどういうわけか(おそらくプロテインメーカーの企業戦略で)定着してしまっていますが、

身体がエネルギーを欲しがっているのは運動後だけではないはずです。

むしろ運動中の方が積極的に欲しているというとこともよく考えればわかります。

 

体内(血液中)にエネルギーが無い状態で、それでも体を動かすということになると、人体は筋肉を分解してエネルギーを作り出すため、身体がやせ細ります。

この状態を防ぐためには、運動中のエネルギー摂取が重要になるわけで、皮膚感覚でそれをわかっているボディビルダーやフィジーカーはトレーニング中にはお手製のエナジードリンクを持参してそれを飲みながらワークアウトします。

 

そしてトレーニング後のプロテイン摂取は当然、とも言えますし、その日のタンパク質摂取量の必要量を満たすために摂るという言い方もできます。

朝起きて朝食時にもプロテインを飲みますし、夜寝る前にもプロテインを飲みます。

トレーニングする前にも飲みます。

それくらい飲まないと、筋肉量を増やすための必要量「自分の体重×2g以上」の量に達しないからです。

 

こうやって見直してみると、もう1日中プロテイン(タンパク質)ばかり摂取していないといけないことがわかりますね。

 

ポイントなのは「トレーニング後30分以内だけ!」のタイミングで飲んでいる人が多いということ。そしてそういった人の多くは、「飲み過ぎると脂肪に変わる」という誤解や恐怖感から、トレーニングしない日やトレーニング後以外のタイミングではプロテインを飲んでいないことが多いということです。

(恥ずかしい話ですが私もそうでした)

 

プロテインを飲むタイミングは「1日中どの時間帯でも」と表現してもいいのかも知れません。

スクワットをするまでに確認しておくと良いこと

「キングオブエクササイズ」と呼ばれるスクワットというトレーニングですが、ダイエットに関する記事やテレビの健康情報などでも頻繁に紹介されます。

matome.naver.jp

丁度このようなものですね。

ほんとうに、「よく見る記事」「何度も目にする記事」ですね。

これと同様に「体幹トレーニング」というのも「ぽっこりお腹を引き締める!」というようなテーマで、ダイエット法の一つのようにして取り上げられることが多いかと思います。

 

なんでもかんでもスクワットすればいいのか?と思うかもしれませんが、

「はい。そうです。」と言っても差し支えないものなのです。

 

「痩せたいんだけど」

「健康になりたいんだけど」

「筋力強化したいんだけど」

などの質問に対して

「取り敢えずこれをやってください」といって一つ挙げるとするとスクワットが最も有効なエクササイズです。

 

ですが、「スクワットをすること」がいかに有効だとしても、「その前段階にいる人」というのも非常にたくさんいると私は感じています。

もちろん細かいことを考えずに「取り敢えず形だけでも」ということでスクワットを実践することは良いことであり、どんどんやるべきです。

 

同時に以下に挙げる点を考慮しておくと、自分がスクワットをやってよい段階なのか、実はその前の段階にいるのか、がわかります。

 

ポイントは「足(足の指)のグリップ力」と「骨盤の動き」です。

体幹という言葉が本当に浸透して、バランスを取る力=体幹 という認識が定着している感がありますが、人体が直接的に地面を接しているポイントは足です。

その足+足の指で地面をしっかり踏みつけるor地面をグリップするということができていないと、その時点でバランスを取ることが難しくなります。

 

まず、自分の足を見て見ましょう。

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このような偏平足になっていないでしょうか?

こうなっていたら足の指の筋力の低下が疑われます。

足の指でギュッと握りこぶしを作ることができるでしょうか?偏平足の人は思ったほど足指が曲げられないと思います。

 

それに関連して、次のチェック項目です。

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この様な「片足立ち」ができるでしょうか?このイラストは両腕を広げていますが、これだと手でバランスを取ってしまうことになるので、できれば両腕は体側につけてチェックするといいです。

足の指の筋力が無い、ということだとこの姿勢のキープができない可能性が高いです。

 

そして骨盤です。専門用語で「前傾」と言いますが、

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この様にお尻を上げて腰の反りを作ることができるか、という点です。

これを調べる良い方法は「あぐら」です。(以前にも同様の記事を書きましたが)

あぐらをかいたときに「両膝がぺたんと床につく」か「床につくくらいの低さまで膝が落とせる」ということなら大丈夫です。

 

しかし

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このイラストの通り、あぐらをかいてみると膝がぴょこっと上がってくる+手で押し込んでも頑固なまでに上がってきてしまう、という状態の人は多いのです。

 

この3点を自分で調べてみましょう。

全部できるならばスクワットをやってもいい段階だと言えます。

繰り返しますが、問題があってもスクワットをやることに意味はありますので、どんな人でもどんどんやるべきです。

 

 

イラストや画像はネットからお借りしました。

働き方は変わっていくが、健康の作り方は変わらない。

目に入ってくる新聞記事やネット記事のタイトルがどうしても働き方改革に関することや色々な物事、既成概念の変化についてことが多く、気が付くと運動やトレーニングに関することをあまり書いていない状態になっているこのブログです。

 

それだけ、2016年~2017年はあらゆる分野で大きな変化が始まる年になるのでないかという印象があるからです。

天皇陛下が譲位のご意向を示され、2年後には新たな天皇陛下の即位と新たな元号が制定されることがその象徴のように思えます。

 

フィットネス業界でもその業界で働く人のスタンスや業界内でのあらゆる変化は予想できますが、一方でフィットネスそのもの、つまり健康の在り方というものは今後も変わることはないだろうと予想されます。

 

このまま科学技術が飛躍的に進歩すれば

どれだけ暴飲暴食をしても「これを1粒飲めばすべてチャラにできます!」という薬のようなものや、

このカプセルに30分入るだけで、筋トレなんて全くしなくてもムキムキで腹筋もくっきり割れたカッコイイカラダが手に入る!なんていうものもできるでしょう。

技術的には現在のもので十分可能なのかもしれませんが、それが電子レンジのように「一家に一台」くらいのレベルになって生活に浸透するまでにはまだ膨大な時間がかかると思われます。

 

そう考えると、やはり、健康状態と作ることは「運動と食事」という基本線はまだこの先も変わらない軸のようなものだと言えます。

 

運動は健康のために必要なことですが、正確に言えば「負荷を掛けること」としての運動が必要です。

身体を動かすこと=運動ですから、横になって寝ている状態以外のすべての人の行為は運動だと言えます。日常生活の行為はすべて運動ですが、それだけしていればどんどん健康になっていくかというとそんなことはありません。

 

そこには色々な身体機能を向上させるための「負荷」が掛かっていないからです。

楽にできる運動というのはあくまでも「何もしないよりはマシ」という状態に自分の身を置くということにすぎず、より良い状態を作りたいということであれば、「楽にできる」という程度の強度(負荷)を上げる必要があります。

 

つまり「自分にとって苦しい!」と思える負荷を感じることが必要です。苦しさばかりを追い求める必要はないですが、

歩く、走る、泳ぐなどの有酸素運動や筋トレや短距離走などの無酸素運動でも、「苦しい」と感じる要素を得ることが健康づくりには有効です。

 

どんな運動が効果的なのか?ということで健康を追いかけるのではなく、どんな運動でもいいので、少しだけ「キツイな」「苦しいな」と感じる事ができるか、を考えてみましょう。

健康の基本はそこにあります。その基本は変わることはありません。

「両端」で考えるステロイド

ボディビルやその他コンテストで常に上位に入るトップクラス選手達には

「もしかしてステロイドをつかってるんじゃないのか?」という疑惑の目が向けられることが多いです。

その真偽ははっきり言ってわかないのです。

使用してない人からすればいい迷惑な話ですが、使用している人がいたとしても、その人がいつどんなタイミングで使用しているか、その瞬間を目にすることは不可能に近いでしょう。

(ステロイドとは薬物でなくホルモン)

 

ボディビル系の団体が使用を禁止しているホルモン剤を使っているというのは単純に考えれば「ズルをしている」ということになります。

 

一方で、

ほぼ毎日のようにトレーニングをして、ありとあらゆるサプリメントを使って、どれだけハードにトレーニングをしても、なかなか筋肉は付かない(一般人からするとついているけど大会参加者としてはまだまだ)という現実もあるわけです。

これだけ色々やってもなかなか大会の順位が上がっていかない、、、という悩みが長く続くと「もうステロイドやるしかないのか?」という考えがよぎるというのはある意味普通の感覚と言ってもいいのではないかと思います。

当然、ステロイド材を使用したとしても、トレーニングをしなくてはいけないことは事実です。

 

アメリカのプロレスラーはプロテインを飲む感覚で普通にステロイド材を使うというような話を雑誌等で読んだことがありますが、決して「ずるい」と一言で言えるものではありませんでした。

プロレスラーになるためにはまず身体を大きくしないといけません。

そしてなった後も「大きな身体」を維持していく必要があります。

 

何年もかけてトレーニングして身体を作っていてはレスラーとして活躍するための「時間」がドンドンなくなります。

ですからできるだけ早い段階で身体が大きくなっている方がレスラーとして活動できる時間が長い、つまり長い間プロレスラーで居られるわけです。

 

ちまちまトレーニングしているよりも、自分の夢のためにはステロイド材くらい使ってでも近道を通ろうという気持ちは十分理解できます。

 

ステロイドをただのチートとして考えるか、夢を叶えるための手段として考えるか、両端を見て考えてみましょう。

両端を知ることの重要性

今日は、私が職場としているフィットネスクラブの利用者数が大変多く、自分のトレーニングのために行ったジムでも、ものすごい数の利用者でした。

ベンチプレス4台、パワーラック4台すべてが埋まっているという混み具合でした。

 

入会者の数も多いようで、フロントスタッフはほとんど入会受付業務を行っていたようです。やはり新年ということで「今年はちゃんと運動しよう」という気持ちを新たに持つ人が多いということでしょう。

新たにフィットネスクラブに入会されたという人はぜひともこの勢いを継続させてほしいと思います。

 

さて、

自分の職場としてのジムと、自分のトレーニングとして利用したジム、この二つに見られたのはまさに「両端」とも言える現象でした。

職場のジムの利用者と自分のトレーニングで使ったジムの利用者たちの「体つき」には右端と左端と言ってもいいくらいの差がありました。

 

私自身も信頼できる講師の方から習ったことなのですが、この「両端を知る」というというのは物事の本質を理解する上で非常に有効な手段となるそうです。

 

例えば(極端ですが)相撲というもので考えても

全国中継のテレビ放送に取組が映る力士たちばかりを見て相撲が「わかった気」になってはただの勘違いだそうです。(ただ単に相撲を見るのが好きというのならOK)

そういった力士たちがいる背景には「付け人歴10年以上」という下っ端の力士や、何年やってもなかなか幕内に上がれない力士が「ものすごく大勢いる」という現実があります。それを理解するには相撲部屋の稽古などを実際に観に行くということをしないとダメです。

 

フィットネス業界に置き換えてみると、例えばライザップによるボディメイク(ダイエット)などは、既にボディビルをやっている人や身体を作り込んでいる人たちから見れば「どこがボディメイクなの?」と言いたくなるものです。

それは「圧倒的にもの凄い筋肉量と少ない脂肪量」によってできた身体というものを実際に自分の目で見ているからわかることです。

 

体幹を鍛える」「インナーマッスルを鍛える」「加圧トレーニングは脂肪燃焼に効果的」というような誰しも一度は聞いたことがあるであろう言葉も、「それしか知らない人」か「それとは正反対の主張やトレーニング理論も理解している人」が発するのかによって内容は大きく異なってくるでしょう。

 

ボディメイクが流行り、ボディビルやフィジークという競技の参加者が増えているのは確かですが、それでもまだ「筋肉好きな人たちの間での盛り上がり」という一面もあるということです。

 

 

 

働き方改革とフィットネス業界③

昨日の続きです。

 

会社にしがみつく施設管理者と、その下で働く従業員の離職率があがり、アルバイトスタッフ募集を掛けてもなかなか人が集まらない、となると、どんなことが起こると考えられるでしょうか?

 

一つ考えられるのは、フィットネスクラブの月会費など料金が値上げするということです。

今年の6月から、「はがき」の料金が62円に値上げされます。

その理由は、年々手紙やはがきを出す人が減っていること+人件費の上昇による収益の悪化、だそうです。つまり売り上げが上がらない、もうけが出ないからその分を値上げして末端のはがき購入者に負担をさせているということになります。

「まず人件費をどうにか削減しよう」とか、「利用者の方への負担を極力減らそう」という発想の結果が「10円の値上げ」に出ていれば良いのですが、やはり「中で働く人たちの生活」のためにはやむを得ないということだと思います。

 

この様に「人が集まらない」+「過去に雇用した人に対する賃金をたやすく下げられない」という要因が合わさると、その負担を受けるのはお客様になってしまうので、フィットネスクラブの会費というのは値上げすることになるでしょう。

 

同時に現時点でも起こっているのは「さらなる人件費カット」です。人件費を掛けなくても収益がある程度上がる仕組み、と言ってもいいかもしれません。それがいわゆる「24時間型の無人ジム」です。大型のフィットネスクラブの出店がもうほとんど見られない反面、最低限のスタッフだけ置いて(時間によっては無人状態)いる形態のジムは2020年までに300店舗まで増やすという計画も出ているようです。

この形態であれば、人件費はさらに安くできるのでその分、お客様が負担する会費も安く済みます。24時間型のジムの会費はどこもかなり低額です。スマホの方が高いでしょう。

 

この様に、人手不足・人口減少によってフィットネスクラブというものは「料金の高額な大型クラブ」と「小型の低価格ジム」の2つに業態は分かれていくのではないかと考えられます。

どちらにもそれぞれの良さがあるわけですが、ハコを作って儲けるという発想では通用しないことだけは確かです。