昨日触れました「トレーナーオブザイヤー」というものについて掘り下げていきましょう。
これはフィットネス関連情報誌(フリーペーパー)の「NEXT」を発行する出版社(名前はわかりません)が毎年行っている「企画」です。
フィットネスに関わる者たちがどんなことをしたか、どんな実績を残したのか、などということをコンペティションし、編集者や審査員がその年の最優秀トレーナーを決めるというものです。
ここでまず一言言いたいのは「トレーナーオブザイヤー」という名前です。フィットネスに関わる人のことを「トレーナー」と呼んでしまいますが、実際にスポーツの現場等で本当に「トレーナー」をしている人とは全くの別物です。
「こんなトレーニング方法やケガの対応方法が選手の活躍に貢献した」とか
「トレーニングサイクルを工夫したことによってチームが勝った」などということが「トレーナーの仕事」と考えるのが一般的だと私は思うのですが、
NEXTで取り上げられるのは「加圧ジムをオープンして経営が順調である」とか「ピラティススタジオが盛況で2店舗目、3店舗目と店舗数が増えている」というような経営者としての手腕が発揮されている人たちです。
中には、トレードマークとして髪型をリーゼントにしているジム経営者がグランプリを受賞したケースもあり、本当にやるせない気持ちになりました。
スポーツの現場で日々活動する本当のトレーナー達はこういった企画に応募してくることはまずありません(そもそもそんな時間が無い)。一流アスリートやスポーツチームに帯同しているトレーナー達とフィットネス業界が「トレーナー」と呼んでいる人たちは全くの別物だということです。
そして、このトレーナーオブザイヤーの最大の問題点はその選考方法にあります。
自薦他薦を問わないのです。自薦OK!つまり
自分で応募することが可能なわけですね。
実際にこれまでの受賞者たちのほとんどは自分自身でプレゼン資料を作り、選考を受けています。
現場での指導と経営するジムのマネジメントをしながらよくそんな資料を作る時間があるなと思ってしまいます。(実は暇なんですかね?)
選考委員たちへ向けて、自分の活動実績をキレイに資料にまとめて送れば選考に通るかもしれないわけです。人に見てもらうとなったら多少は実績を「盛る」でしょうし、やろうと思えば大したことが無いことでもそれっぽく演出ができてしまいます。
ここに問題があります。
中にはチベットなど海外へのボランティア活動(実際はただのバックパッカー)をしたり全身タイツを着て盛り上げ役として東京マラソンに参加したなどというトレーナー活動とは明らかに違う内容の活動をしている者が受賞していたりします。
これはどう考えてもおかしいです。
そのトレーナーの腕やサービス精神、人格などが評価の対象になるべきであり、それを判断するのはそのトレーナーの周囲にいる人やお客様であるべきだと私は思います。
ミシュランの審査は審査員たちが一般客に紛れて極秘に来店し、料理の味やお店の雰囲気、店員の印象などを判断して星をつけるかどうかを判断しているそうですが、審査というものはそれが当たり前でしょう。
オリンピックの候補地などのように「一つの共通の目標に対する審査」ということであれば自薦というのは自然なことですが、どのトレーナーが優秀なのか、ということはNEXTを発行する会社の編集委員たちが、各スポーツクラブや個人経営ジムの利用者たちか生の声を集め、実際に客として現場に足を運んだ上で審査をしていくべきものです。
明日はさらにトレーナーオブザイヤーが作り出す業界の大問題について触れていきます。