スポーツジムで働くトレーナーblog

フィットネスクラブでパーソナルトレーニングをしているトレーナーです。トレーニング関連の話、フィットネス業界の話、健康関連の情報・ニュースなどについて書いています。

パーソナルトレーナーたちの今後とは(業務委託契約とパーソナルトレーナー養成ブーム)

本日もパーソナルトレーナーという仕事の今後について

考えるにあたり、過去を振り返っていきます。

 

業務委託契約という人件費0円で人をこき使える利益が生まれる画期的な「雇用形態らしきもの」を発明したフィットネス業界はその仕組をより入念に練り込む一方で、それをどんどん広めようと精力的に動き出します。

正社員よりも時給900円前後のアルバイトスタッフを積極的に雇用して下げに下げている人件費を更に下げることができ、その上店舗へ収入も入る業務委託契約を活用しない手は無いですからね。

 

またたく間にフィットネス業界の求人誌やジョブサイトなどは

パーソナルトレーナー養成コースや認定資格講座の案内で埋め尽くされるほどになりました。ACSMやNATA,NSCAなど米国に本部があるトレーナー団体の認定資格を学ばせるものから、FNC、JHCA、日本コアコンディショニング協会など何が何だか分からない団体がどんどん現れて資格を発行するようになりました。その現象は現在も続いています。

それに遅れるようにピラティスとヨガの認定資格養成コースも雨後の竹の子のように後から現れてくることになります。

 

フィットネス業界の詐欺まがいの(というか詐欺そのものの)構図である

新しいエクササイズ器具がどこからともなく登場→すでにその器具のマスタートレーナーがいる→マスタートレーナーがその使い方を何も知らないヒヨコに教えて、あたかも「この資格を取ればあなたの仕事が増えて収入アップする」と思わせて認定資格を取らせてお金を搾り取っていく。

というねずみ講のような仕組みはこの時に生まれたと私は考えています。

 

コメンテーターとしてメディアにちょいちょい出演している田中ウルヴェ京さんもかつてはフィットネス業界紙の「NEXT」で「運動経験があまりない主婦でも今ではピラティストレーナーとして活躍し、テニスのジュニア選手のコアトレーニングを担当しているケースもある。その選手が彼女を選んだ理由は”お母さんみたいに教えてくれるから”ということだから誰でも何か人から必要とされる要素はあるはず」などとコラムに書いていて、ピラティストレーナーの資格を取ることをおすすめしていました。

(コラムを写真に撮っておいたんですが、消去してしまいました)

 

パーソナルトレーナーという仕事は素晴らしい仕事だ

やり方によっては人の倍は稼ぐことができる

日本は健康ブームが続いていくので絶対に必要とされる仕事になる

サラリーマンではなくプロの技術者として働けるのでカッコいいよ

などなど、「0円で人を働かせることができる契約」という部分には触れられることなく夢ばかりが強調され、それに夢中になってしまった何も知らない愚か者たちが資格取得に夢中になってしまいます。私もそのうちの一人です。

 

私の感覚では2003年頃からの約5年間ほどの期間だと思いますが、その時期はそうやって夢を見させられて、わけのわからないトレーニング団体の資格を取得したパーソナルトレーナーたちがフィットネスクラブに入って活動するようになった年代です。

 

同時にフィットネス業界では全国各地で新店舗の出店ラッシュが続きました。それに加えて同時にフィットネスクラブの会費の価格低下、値下げ競争も一気に進んでしまいました。かつては富裕層のみが通うラグジュアリー施設だったフィットネスクラブが月会費1万円前後で誰にでも利用できるようになり、正規の会員よりも安い値段で利用できる「平日利用会員」や「ナイト会員」などの種類もどんどん生まれました。

パーソナルトレーナーにとっては活動の場が多くできたというチャンスでもあるのですが、当たり前ですが現実はやはり厳しいものでした。

 

1回1時間6000円という料金でトレーニングを受け、それを定期的に行うというパーソナルトレーニングの仕組みは、安さを強調する広告を見て入会した利用者からは「高すぎる金額だ」というイメージが先行します。今では当たり前の(根本的には異常ですが)料金体系もその認識が定着していない段階では受け入れてもらえず、また当時はまだパーソナルトレーニングという言葉も全く通じない時期です。

それに加えて、トレーニングの理論や知識を真面目に勉強してきたトレーナー達は「その知識をどうやって売り物にするか」などということを全く考えてこなかったわけですし、施設側がそういったこと(お客さんがパーソナルトレーニングを購入するサポート)をやってくれるのだろうと漠然と考えていました。

 

フィットネスクラブのジムエリアに立ってお客様と話をして、そこからどうにかパーソナルトレーニングを受けてもらえないかと誘導しようとしますが、トレーニングアドバイスや指導を無料でやってあげてしまうことで終了してしまうことが大半でなかなかお客さんを捕まえることができません。

むしろ知識も技術もないけど前職が営業職で口八丁な”トレーナーみたいなヤツ”の方がうまくお客さんを獲得していきます。

 

夢を見たトレーナーたちは一気にどん底に突き落とされ、悩み苦しむことになりました。

 

つづく