前回の続きです。
まだ「筋トレ」というものが異質なものという見方をされていた頃、フィットネス業界は「見せかけだけの使えない筋肉よりも機能的なカラダを!」と打ち出した方が世間にウケるだろうと考え、機能的なカラダ作り=ファンクショナルトレーニングというものを施設内に導入するようになりました。2012年~2015年頃のことです。
ただダンベルを上げ下げしたり、単調な筋トレマシンを動かすだけの筋トレよりも、ちょっとした遊び感覚も含んだファンクショナルトレーニングなら飽きも来ないだろうと考えていたりもしました。
そしてこういった時にフィットネス業界が馬鹿の一つ覚えのように参考にして、丸パクリのように導入するのが「海外で行われているもの」、「有名アスリートがやっているトレーニング方法」です。
この時、ファンクショナルに合わせて「体幹」という専門的な匂いがするカッコイイ言葉にも業界は目を付けました。
少しフィットネスについて調べたことがある人なら体幹トレーニングという言葉を聞いたことがあるかも知れません。サッカー日本代表だった長友佑都が行っていたトレーニング方法として、長友自身も何冊か本を出しています。
また、モーグルというスキー競技のオリンピック選手だった上村愛子のトレーナーもファンクショナルトレーニングの第一人者とも言える人物で、ビデオカメラか何かのテレビCMにも出演するほどの有名人です(業界的には、です。世間的には知らない人が大半でしょう)。
「海外」からは、ピラティス、TRX(サスペンショントレーニング)、アスリーツパフォーマンスで行われているトレーニング方法、
「有名アスリート」からは、コバトレ、ファントレが参考(事実上の丸パクリ)にされました。
簡単に説明すると・・・
・ピラティス:ドイツ人のジョセフ ピラティス氏が考案したトレーニング方法
・サスペンショントレーニング:鉄棒の吊り輪のような器具を使ったトレーニング方法
・アスリーツパフォーマンス:アメリカのアリゾナ州にあるプロアスリート用トレーニング施設
・コバトレ:長友のトレーナーだった木場(こば)という人がやっていた方法
・ファントレ:上村愛子のトレーナーだった鈴木岳(すずきたけし)氏が運営するジムで行っているファンクショナルトレーニングを初心者向けにまとめたもの(多分、本が出ています)
となります。
詳しくはそれぞれGoogle検索をお願いします。
こういったトレーニング方法に合わせてフィットネスクラブはどこも大幅な施設リニューアルを計りました。
例えばサスペンショントレーニングをグループレッスンとして行うための「サスペンションを引っかける鉄棒」を設置したり
ジムエリアに人工芝を植えてスポーツに直結する動作がやりやすいようにしてみたり
スタジオプログラムやフリースペースのショートレッスンでも体幹や機能的といった言葉に沿った内容のものが次々と導入されるようになりました。
体幹・ファンクショナルが強調される前から使われていたバランスボールやストレッチポールなどが使われるレッスンでも「体幹を鍛えましょう!」というインストラクションがかかるほどでした。
新しいトレーニング方法やプログラムが導入されれば、最初は物珍しさで人が集まります。コバトレやファントレをベースにしたプログラム、海外で行われているメソッドは一定の参加者を集めました。パーソナルトレーニングジムもゴリゴリの筋トレ系ジムではなく、ピラティススタジオやファンクショナルトレーニングジムが出店されるようになります。
特にピラティスは2LDKくらいの部屋でも(もっと小さなスペースでも)できるものなので、中には自宅を改装してスタジオオープン!なんてやっているところも出てきました。
この2012~15年頃のスポルテックやHFJというフィットネス業界の一大展示会はまさにファンクショナルトレーニングが注目の的でした。
東京ビッグサイトの展示室の中でも中心部にブースを陣取り、大音量で音楽をかけてTRXのデモンストレーションが行われていましたし、バイパーというまるでバズーカ砲のような形をした器具を使ったファンクショナル運動も派手にパフォーマンスをしていました。
しかし、時間が経過してみて結果的にどうなったかは今回のスポルテックの会場風景がそれを証明しています。
「ファンクショナル」や「体幹」は定着しなかったのです。
ブームになったと言えばなりましたが、そのブームの規模は微々たるもので「ウォーキングドクターデューク更家」や「カーヴィーダンス」、「ビリーズブートキャンプ」など一時的とはいえ社会現象と呼べるほどのものまでにはなりませんでした。
「次はファンクショナルとか体幹が来るぞ!」と期待していたフィットネス業界だけが勝手に盛り上がっていただけに過ぎないのです。
この誤算の原因は、先ほど挙げたキーワードである「海外」「アスリート」に反応してしまったこの業界の(業界人の)頭の悪さにあります。
まず、海外で盛んに行われているとかアスリートがやっているトレーニングなどと言われても一般人には「ふーんそうなんだー」という程度にしか響きません。
サッカーやフットサルをやっている人は多いですからそういった人なら「長友がやってるトレーニング方法?ちょっとやってみようかな?」という気持ちになることはわかりますが、フィットネスクラブに来る人の大半は運動不足や体重増加を気にしてくる人たちです。アスリートのトレーニング方法よりも自分にはどんな運動が適しているのかの方が気になるはずです。
また、ファンクショナルトレーニングというのは実は難しいのです。
例えば「不安定な状態でも体幹がブレないカラダを作るトレーニング」として、
・右足で片足立ちになり
・左手でダンベルを持って肩の高さまで持ち上げ
・さらに頭上に上げる
という動作をやってみるとしましょう。
運動初心者であればまず片足で立っただけでかなりフラつきます。そしてダンベルを持ちあげるにしてもアップライトローやショルダープレスといったトレーニング動作がある程度理解できていなければ、何が何だかわからないものになります。
つまり、ファンクショナルトレーニングが上手にできるようになるにはスクワットやデッドリフト、ベントオーバーローイングなどの昔からある筋トレで「股関節から体幹を屈曲させる」というような基本的な筋トレが出来ている必要があるのです。
機能的なカラダを手に入れるためには
見せかけの使えない筋肉を作るためのトレーニングをする必要があったわけです。つまり「筋トレ」こそが真のファンクショナルトレーニングであり、体幹トレーニングだったのです。
業界が流行らせようとしたファンクショナルトレーニングでしたが、結果的に「昔から行われている筋トレ」が見直されるようになってきました。
後編へ続く。
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