フィットネス業界の誤算シリーズの最終回です。
ファンクショナルトレーニングがヒットするだろう!
と、考えたフィットネス業界各社は運営するフィットネスクラブ内にファンクショナルエリアを新設したり、グループエクササイズに体幹トレーニングメニューを取り入れたものを積極的に導入するなどして、意気揚々と多くの入会者が集まること、会員数が増えること、そして何より儲かることを期待していました。
これが2012~15年頃のことです。ですのでこの頃は「2020年に開催される東京オリンピック」にも業界は大いに期待をしていました。
オリンピック期間中には数多くのスポーツが視聴され、それに触発されて多くの人が運動を始めようという気持ちになり、フィットネスクラブへの入会者も増えるだろうというなんとも短絡的な発想です。さらにそこに「アスリートも実践する体幹トレーニング」とくればバッチリだ!ということですね。
「これは良いトレーニング方法だ」として広く実践されるようになったのか?というとそんなことはありませんでした。ファンクショナルや体幹を導入してから入会が増えた・会員数が伸びたという施設もありませんでした。
実際にファンクショナルや体幹トレーニングというものをやってみると、結局は基本的な筋トレ動作であるローイングやプレスといった動作をするものであったり、ピラティスで頻繁に使われる「背骨を一つずつ動かしていく」などの難しい表現や動作があったりで、「なにがなんだかよく分らないもの」と世間的には認識されてしまい、とてもじゃないけど広く多くの人に実践してもらえるものにはなりませんでした。
ファンクショナルと体幹から目新しさ感が薄れてきたころ、突然インパクトのあるテレビCMが頻繁に流れるようになります。それがライザップでした。
「太ってだらしない体をした人が、カッコイイ(キレイな)体へと劇的に変わる」というシンプルなCMは一気に世間の注目となり、話題をかっさらっていきました。
一つの事に焦点を絞ってメッセージを打ち出すというのは「ランチェスター戦略」の基本ですが、まさにそれを忠実に再現したのがライザップのCMです。
「どんなところなのか?ダイエットのために何をするのか?」といった説明が一切無く、「ここに来ればあなたの体はこうなります」という効果だけを伝えるCMは、一種の人気キャラクターのように世間にウケまくったのです。
実際にライザップを利用する人達が出てくると「ライザップって何をするの?」ということも明らかになってきます。この時期に「パーソナルトレーニング」という言葉も一気に世間一般に浸透し、その意味を多くの人が理解する共通言語までになりました。
ライザップ以前の2003~2009年頃はパーソナルトレーニングという言葉の意味すら知らないという人が多く、「パーソナルトレーニングとは専属トレーナーがマンツーマン指導をするもので・・・」と説明をしないといけないものでした。
そしてライザップのパーソナルトレーニングでは、ダイエットのために何を指導されるのかというと「筋トレ」です。
バーベルを担いでスクワットをしたり、ダンベルフライやローイングをしたりという筋トレをするところがライザップで、利用者が増えるほどに筋トレをすることがダイエットのために有効、カッコイイ体作りのために必要なことなんだという認識が広まっていくようになります。
また、2015年頃はスマートフォンの高速データ通信化とネット環境の配備に合わせて、YouTubeが現在のような巨大データベースとも言える存在になっていく、その出だしの時期でもありました。
この時期に今ではユーチューバーと呼ばれる「YouTubeを使って有名になって金を稼ごうとする人たち」も活動を始めるようになります。
サイヤマングレート、コアラ小嵐、ステロイドを使う前の(たぶん)カネキン、小池友仁などはいち早く動画配信を始めた筋トレユーチューバーたちで、自身のトレーニングや減量の時に食べている実際の食事などを公開することで視聴者を増やしていき、現在ではすっかり成功者に成り上がっています。
彼らが動画配信するコンテンツによって
「身体を鍛えることってかっこいい・おしゃれ」
「球技やスポーツは今更できないけど筋トレならできるかも」
といった印象を持ち、トレーニングを始める人たちが急増していきました。実質的にこの時点でゲームチェンジが起こったと言えるでしょう。
筋トレが流行ると今度は鍛えた体を披露する場として様々なコンテストがあるということも世間に知られるようになります。
中でも「ボディビルという所まで行かない程度のカッコイイ体」を競い合うフィジークというジャンルの競技は「出てみたい」という人が急増し、大人気のコンテストになりました。(今ではフィジークもボディビルとほぼ同じですが)
コンテスト出場へ向けて、競技者たちが何を頼りにしたかというと
これまでゲテモノ扱いされてきたボディビルダーたちでした。
YouTubeなんか無いころから、ライザップも存在しなかったころから「体を鍛えることってかっこいい」という思いを実践し続けてきたいわば先駆者たちが、やっと日の目を見るかのように世間に注目されるようになります。
特に山本義徳さんのブレイクはすさまじく、筋トレに興味がある人なら一度は関連動画を目にしたことがあるほどになりました。
これまでは
「何目指してんの?」
「そんなに鍛えてどうするの?」
「ウエイトトレーニングで作った筋肉は”使えない筋肉”だ」
「筋肉を付けすぎるとスピードが落ちる」
「ボディビルダーなんて気持ち悪い」
など、散々な言われようでバカにされてきた「筋トレ」に対する視線のあり方が、一気に羨望の眼差しに変わったのです。
そして2022年現在。
すっかりフィットネスの主流は「筋トレ」に変わりました。
ファンクショナルと体幹は、完全に後退しており、長友がやっている体幹トレーニングの「コバトレ」なんておそらく誰も知らないでしょう。
コロナという事態も予想外でしたが
フィットネス業界は筋トレが「まさかこんなことになるなんて」と呆気にとられている状態です。
終わり。
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