フィットネスとは無関係ですが1月中にこの件については触れておこうと思い、2021年大晦日のRIZIN、シバター対久保優太について、今更ながら思う所を書いていきます。
問題となっている点をおさらいします。(時系列に沿っていません)
・大会数日後にこの試合が八百長であったのか?という疑惑が噴出、炎上する
・事前にシバターから久保優太に当日の試合展開についての口裏合わせがあった
・シバターは事前に決めた展開通りに試合をせず(ブック破り)、久保から一本勝ち
その他色々
といったところでしょう。
この問題(らしき現象?)を見ていくにあたり、参考にするべきはPRIDEです。
RIZINとは要するに「PRIDEの続き」です。
1997年に「格闘技の単発イベント」としてPRIDEという
格闘技大会が行われました。
当時はまだ現在のようにインターネットが普及していない時代であり、地上波のテレビ放送並びにテレビ局がメディアのトップに君臨していた時代です。
そしてアメリカでは(ネットの普及は日本と同じくまだまだでしたが)、既存のテレビ局の番組の他に、いくつものケーブルテレビや衛星放送のチャンネルがあり、pay per view=見たい番組にはお金を払って視聴するというビジネス(仕組み)が既に出来上がっていました。
WWEはこの仕組みを利用し、無料のテレビ地上波放送では中小規模大会の試合を見せ、注目のビッグマッチは視聴料がかかるという形式を90年代から定着させています。
PRIDEは当初、同じ頃に登場した「スカイパーフェクTV」という約300チャンネルもジャンルがある有料衛星放送サービスのキラーコンテンツを狙ったものとして生み出されたものでした。現在も「スカパー!」という名前で存続しています。
スカパー!のチャンネルだけでなく、90年代は何度も視聴率三冠王に輝いてた最強のメディアであったフジテレビがその放映権を取得したこともあり、PRIDEは一気に大人気イベントとなって熱狂を生み出します。
格闘技好きな人なら「既に誰でも知っている」と言っても言い過ぎではありませんが、PRIDEでは実際に八百長試合があったことが明らかになっています。
刃牙シリーズの作者の板垣恵介氏は「板垣恵介の激闘達人烈伝」という著書の中で、高田延彦対カイル・ストゥージョンの試合が八百長であったことを批判しています。
またPRIDE消滅後には、出場選手であったマーク・コールマンが高田延彦との試合は事前に試合展開の取り決めがあったことを公にしていますし、
同じくゲイリー・グッドリッジも小川直也との試合の前に「八百長試合をして負けてくれたらファイトマネーを増額する」という打診を電話で受け(誰が掛けてきたかは不明)、「冗談じゃない!」と断ったということを明らかにしています。
PRIDEがアメリカのラスベガスへ進出した際の五味隆典対ニックディアスの試合も八百長試合であったと言われています。
それ以外にも「テレビ的に勝って欲しい選手が優位になるようにレフェリーが動いているんじゃないか?」と思われる試合も数多くありました。
前置きが長くなりましたが、まず八百長について言えば
「興行である以上発生しても仕方がないこと」だというのが私の意見です。RIZINは柔道やレスリング、ボクシングのような世界共通のルールがある「競技」ではなく、「強そうな人同士を戦わせてみよう」という興行=イベントです。
競技者同士の優れた技の競い合いを見る物というよりは、より多くの視聴率や再生回数になるもの=お金になる要素を生み出すことが優先になるのは当たり前です。
とは言え、PRIDEにはそれでもしっかりとした「競技性」がありました。出場する選手はみんな「確かなアスリート」でしたし、ヒョードル、ノゲイラ、ミルコなど100kg超えのヘビー級選手がゴロゴロいました。
ヴァンダレイ・シウバや桜庭和志が活躍したミドル級もPRIDEは93kg未満の設定でしたのでやはり一般人とは比較にならない体格です。
シバターも久保優太もアスリートであり、久保選手はK1チャンピオンにもなっていますが、体格は一般人と同じですし、シバターも格闘技の経験と実績はあるためその辺の素人よりは強いことは確かですが、プロアスリートと呼べる体ではないことは見ればわかります。
そして、シバターは仲間のユーチューバーと一緒に入場、久保優太もやはりユーチューバーの妻と一緒に入場してきました。
「鈴木ゆゆうた」という人(こちらもユーチューバーですが)が「ユーチューバーは影響力を持った、ただの素人」と自信のチャンネルで話しているようですが、確かにプロ格闘家が集まるリングにどれほどの人気ユーチューバーが集まっても彼らの素人感や一般人感は目立ちます。
久保優太にはコスプレをした奥さんがリングサイドから応援をしていましたが、PRIDE時代の会場ではまずそんな光景を見ることがなかったですし、そんな光景を見ると大会そのものが安っぽくなってしまった感が否めません。
八百長試合がどうのこうのの前に、「あの時自分が熱狂的に見ていたPRIDEがここまで劣化してしまったか」という気持ちが強くなりました。
シバターは試合後に自ら、久保優太に試合展開について口裏合わせを打診したこと、それを自分から破って何をしてでも勝ちに行きたかったこと、RIZIN関係者たちにも一泡吹かせてやりたかったことなどを自身の動画で語っていますが、その様子はまさにグラップラー刃牙のアントニオ猪狩そのものです。
だまし討ち、急所攻撃、タップしたフリ、土下座(シコルスキーは”土下寝”)など刃牙の中でありとあらゆる卑怯な手段を使うのが猪狩ですが、それを地で行ったという印象です。
そしてだまし討ちで勝利したとは言え、プロのキックボクサーをフックでグラつかせるほどの打撃力があったこと、飛びつき腕十字で極め切るところまで持っていったことは事実であり、「卑怯だ」と言い切れるかは微妙です。
秋山成勲のクリームの方が明らかに卑怯です。
小川直也対橋本真也の試合での猪木の指示による小川のブック破りも有名ですが、プロレス関係者やレスラーの間では、ブックを破った小川よりもそれに対応できなかった橋本に対して「もうちょっと何とかできなかったのか?!」という悔しさがこもったコメントが寄せられたそうですが、
久保優太に対してはまさにそんな気持ちが浮かんできました。
次回にもう少し続けます。