スポーツジムで働くトレーナーblog

フィットネスクラブでパーソナルトレーニングをしているトレーナーです。トレーニング関連の話、フィットネス業界の話、健康関連の情報・ニュースなどについて書いています。

大型施設スポーツクラブから派生して、また戻ってくるの繰り返し

2023年!明けましておめでとうございます。

新年ですが、普通に書いてみます。

 

新型コロナウイルスの影響を受ける前から

大型施設スポーツクラブは実はどの施設も経営状態は良いものではありませんでした。それらしいことはこのブログで何度も書いてきたと思います。

経営陣に「スポーツクラブ運動施設、つまりテーマパークみたいなもの」という考えがあるので「作っておいておけば勝手に人が来る」という感覚になっているため、中身(コンテンツ)をどう充実させるか、までには考えが至っていないのです。

 

現場で働くスタッフやフリーのインストラクターの中には大型施設でやっていることを抽出してきて、小型施設でやってしまえばいい(それだけ大手が何も考えていないことへの失望がある)という考えで、色々なフィットネスビジネスを生み出した人がいます。

パーソナルトレーニングジムなどはその最たるものです。

マンツーマンのトレーニング指導の部分だけ大型施設から抽出してマイジムを開業するということです。

ダイエットに特化したライザップなどは大型施設とは対照的にマンションのワンルームほどの広さで成り立つお店です。

マンツーマンで指導する代わりに料金は高額になるのですがそれでも「やる」という人が思っているより多くいることが分かると、今度は大型施設でも「高額パーソナルトレーニングサービス」が導入されるようになりました。

 

ヨガ、ピラティスなども同様です。

元々は大型施設のスタジオプログラムで色々あるレッスンの一つとして導入されていたヨガやピラティスも「そこだけ抽出してきた」ヨガ専門スタジオやピラティススタジオが増えました。

そしてヨガの場合はホットヨガ、サスペンションを使ったエアリアルヨガなどこれまた色々な形でのヨガが派生してきます。そうすると今度は大手がそこに目を付け、スタジオをホットスタジオに改造して「流行りのホットヨガがウチでもできますよ!」と言い出すわけです。

 

暗闇ボクシングや暗闇トランポリン、暗闇自転車エクササイズなどもその源流は全て大型施設スポーツクラブのスタジオレッスンにあります。

大型施設スポーツクラブから派生したものを、また大手が目を付けては導入する、このループが続き、今では2大型施設でも24時間営業するのが当たり前になってしまいました。

これも大型施設からジムエリアだけ抽出し、どうせなら24時間空けちゃおうということで始めた24ジムが思いのほか人が集まる事に目が留まり、大手が後追いで導入した流れがあります。

 

たぶん今年も、その繰り返しになるでしょう。

どうなる?チョコザップ

2022年、ほとんど記事を書いていませんでした・・・。

というのも目に見えて書くような話題が全くと言って程無かった2022年のフィットネス業界でした。

(などと言い訳ですが)

ウイルスによる営業停止を余儀なくされたフィットネス業界、特に大型施設は現在でも元の姿を取り戻せていません。

この3年で世の中がすっかり変わってしまい、もはや

「駅前にプールもスタジオもジムもエステも温泉もなんでもある施設を出店して数千人単位で人を集める」というスタイルが時代遅れになったようでもあります。

(中には公共施設やホテルのジム・プール運営を受託することで何とかしのいでいるところもあるようです)

 

そんな中で年末に唯一と言っていいほどのフィットネス系情報として注目されたのがチョコザップです。日経トレンディが予測する2023年のヒット(商品?サービス?)に「コンビニジム」がなんと第1位になりましたが、まさにチョコザップのことを指しています。

チョコザップは当初「ZAPAN(ザパン)」という名称で

「ライザップがプロデュースする月2980円の低価格ジム」として世に出ましたが、すぐにチョコザップへとその名称や運営方式を変えました。

 

スポーツクラブ、フィットネスクラブ、ジムなどと言えば「会員制」のサービスです。月定額制で使い放題のサブスクリプションの元祖はフィットネスクラブだと私は思っていますが、従来の「会員」とは「そのお店の会員」を指します。

それに対してチョコザップの会員とは「アプリの有料登録者」です。

 

前者はお店を利用しない、または利用できない状況になる、生活習慣や職場が変ることで物理的に来店が出来なくなるといった理由で退会、つまりそのお店の会員ではなくなるという現象が起こりるため「ある程度の会員数を確保するための現場レベルでの様々な施策」が必要になります。

施設の大小を問わず、すべてのジムやフィットネス施設はそこが商売の肝であり、必死になる部分でしょう。

 

それに対してチョコザップが作り上げようとしているのはその土台を変えるということです。一つの施設に対して何人を集めるか、ではなく、

アプリ会員を増やす

そしてそのアプリ会員がすぐに運動できるように

簡易的な施設をたくさん作る事、これがチョコザップの戦略です。

 

国民全体の性格的に運動をしたがらない日本人の

フィットネス需要を喚起できるのか?

特徴的なCMでヒットしたライザップがどうやってチョコザップをトレンドに載せていくか、注目しています。

一般人を相手にするフィットネストレーナーなら「山本理論」を選ぶべき理由:指導する対象は誰なのか?

またすっかり更新が滞ってしまいました・・・。

そして横川理論vs山本理論もすっかり沈静化してしまいましたが個人的な意見として続きを書いていきます。

 

「筋肉を付けたいならトレーニングボリュームを多く、時間を掛けないとダメ」という横川理論

「筋トレはそもそも無酸素運動、長時間で大量にできるものではない」という山本理論の論争がありました。

このブログでは山本理論を推奨するスタンスを取っていますが、そのもっとも大きな理由が「トレーナーの顧客は誰なのか」ということです。

 

横川理論とは言い換えれば「短時間でちょっとやった程度で筋肉が付くわけないでしょ!ハードトレーニングをしなきゃだめだ!」ということになります。これは確かにその通りです。

フィットネスクラブでトレーナーをしていると、「医者から足腰の筋肉を付けるように言われて・・・」と言って入会する人を頻繁に目にしますし、「見た目にも身体にハリが無くなってきて筋肉が欲しい」という方も多いです。こういった人達に共通しているのは「少し筋トレをやれば簡単に筋肉が付くだろう」と考えている点です。トレーナーなら、または筋トレ実践者であれば当たり前のように認識していますが、筋肉が付くことというのは根本的な体質の変化ですからそうそう簡単に体が変化していくわけではありません。

地道な作業(トレーニング)を、定期的に繰り返して、ある程度の時間を掛けて、やっと自覚できるようなものです。

しかし、本人が自覚できるかどうかは別にして、仮に不定期であっても筋トレをしているかどうかによるコンディションの違いははっきりと表れます。

その違いを日常生活のどこかで感じる瞬間があればトレーニングの意味を感じますが、それ以前に「こんなに辛いことしなきゃいけないの?」と言ってギブアップし、「もう少し軽めのトレーニングから始めます・・・」と筋トレから離れてしまう人も多いのです。

 

さて、パーソナルトレーナーまたはトレーナーとして仕事をしていく場合に考えなくてはならないのは当然ながら「仕事として成立させること」つまり顧客を持ち、リピーター様になっていただいて収入をえることでしょう。

その点から考えると横川理論が通じるのはコンテストに出るような体を作りたいと思っている人か、ビルダー同士、フィジーカー同士の間のみになります。市場規模がかなり限定されますね。

パーソナルトレーナーを別料金まで払ってやろうという人はそういった意識がものすごく高い人である一方、「自分では何をしたらいいかわからないからお金を払うので教えてください」という超初心者も多いです。

ゴールドジムのようなところでも、その他一般的なフィットネスクラブでも、パーソナルトレーナーを頼むのは圧倒的に初心者や高齢者です。

 

その人達が口にするのが「医者から言われた」「筋肉を付けたい」という先ほど書いた言葉です。

そういった人達に横川理論で話をしてしまうと、せっかく興味を持って申し込んでくださった顧客候補の方を逃してしまうことになりかねません。

 

山本義徳さんのプロフィールを見れば、山本さんは決してボディビルダー同士で指導しているトレーナーではなく、他のジャンルの人や選手にも指導していることが分かります。

普通のフィットネスクラブで働いていればアスリートに出会うことなどまずありませんので、一般人それも運動初心者がパーソナルトレーニングの見込み客となるはずです。そういった方々へのいわば宣伝文句として、山本理論は「少し頑張るだけでも意味と効果はありますよ」「短い時間でインターバルも長めにとって自分のペースでやっていいんですよ」という希望を感じさせるものになるはずです。

 

実用性という観点からも山本理論を選択するほうがよいだろうと考えます。

一般人を相手にするフィットネストレーナーなら「山本理論」を選ぶべき理由:横川理論が通用するのは横川さんだけ

前回の続きを書いていきます。

今回は「横川理論」について考えてみましょう。

 

横川理論とはボディビルダーの横川尚隆さんが考える「トレーニングについての意見」です。実際にボディビルという競技で日本一に輝くまでに色々なやり方でトレーニングをしてきたはずですから、その経験の中で体で学んできた「筋トレの現実」とも言えるかと思います。

 

レーニング(レジスタンストレーニング)について少し詳しい人なら

「筋肥大を狙うなら8~12RMで2~3セット」というのはもは定番でしょう。筋トレをしている人ならほぼ確実にこの目安に沿った負荷設定と回数でトレーニングをしたことがあるはずだし、やり続けているはずです。

 

全く筋トレをしたことが無い人が何かのきっかけでトレーニングを始めた場合、「8~12RM」つまり「8~12回ギリギリできる重さ」でやると「筋肥大がしやすい」と理解して、それを信じてマッチョボディを目指していくことになるのが一般的です。

しかし、8~12RMをどれだけきっちりこなしたとしてもそう簡単に筋肉は増えていくものではないということが次第にわかってきます。

 

ボディビルとは言い換えれば

「どれだけ多くの筋肉を付けて脂肪を減らしていくかを競い合う競技」です。野球、サッカー、ゴルフ、格闘技などと同様の”スポーツ”ですので、「これをやれば競技がうまくなる」などという簡単な方法があるわけではありません。

多くの人が上手くなるために色々な練習を何年間も行っているはずです。

 

横川さんはボディビルという競技で日本チャンピオンになったわけですが、その位の実績を残すならば「8~12RM、2~3セット」だけでトレーニングを済ませていて大丈夫なわけがありません。

数ある練習方法の一つが8~12RMというだけです。

 

どんな競技でもそうですが、試合や大会で勝つためにはありとあらゆる練習をする必要があり、試合・大会の規模が大きくレベルが高いものであればあるほどそれにふさわしいだけの練習量、練習時間が必要になります。

山本義徳さんの「101の理論」は一見すると「101の刺激を入れることができれば筋肉は増えるからカンタンだよ♪」と言っているように感じられますが(そうでないことは前回記事に書きました)、横川さんが出場するような大会となると、簡単にできる程度のトレーニングで済ませても勝てるわけがないことは明白です。

 

ですから、「そんな簡単に筋肉はつかないから、ハイボリュームでトレーニングしないとだめだ」という結論に至るのは自然なことで、それが「横川理論」と呼ばれるようになったのだと思います。

 

ポイントなのは

「その理論が誰にでも当てはまるものなのか」という点です。

ハードなトレーニングをしないと筋肉が付かない、時間を掛けてやり込まないと筋肉が付かないというのが確かだとしても、筋トレ初心者がその理論を実践することは難しいはずです。

サイヤマングレートとのトレーニング動画で横川さんは腕のトレーニングだけで6種目30セット以上、それもかなりの高重量でトレーニングをしていますが

それができるのはサイヤマンなどのように既に大会出場経験があり、一定の実績も残している選手に限られます。

 

角度を変えて言えば、

その位のハイボリュームのトレーニングをこなせるのは横川さんしかいないので、彼は日本チャンピオンになれたし、筋トレを通じてテレビタレントにもなれたわけです。

 

横川理論は横川さんにしかできないオリジナルメソッドであり、

オリンピックアスリートが一般人の労働時間に相当する8~10時間を競技の練習に充てるような行為と同じです。

 

多くの一般人には当てはまらない理論でしょう。

一般人を相手にするフィットネストレーナーなら「山本理論」を選ぶべき理由の序論:「101の理論」をきちんと整理してみる

筋トレ界では現在、山本義徳さんが提唱する101の理論とボディビル日本チャンピオンの横川尚隆さんの理論(主張?)が論争を巻き起こしているようです。

 

論争は主にYouTubeの正解で起こっているようで、具体的に両者がどんな言葉でどんな主張をし合っているのか、実際にお互いに個人名を出して批判し合っているのかなど細かい所までは見ていませんが、様々なボディビルダーや筋トレユーチューバー、フィットネスチャンネル運営者がこの理論バトルについての見解を述べています。

 

まず、論争になっているポイントをおさらいします。

山本理論:トレーニングは短時間でも効果がある(むしろその方が効果的)

横川理論:ボリュームを多くして時間を掛けてトレーニングしないと効果は無い(低い)

簡単に書くとそのようになるかと思います(違っていたら誰かご指摘ください)。

ざっくりとですがこの理論関連を扱った一人しゃべり動画を見る限りは「ボリューム少なめ、短時間」なのか、「ボリューム多め、長時間」なのかについてをみんなが意見を出し合っているという所でしょう。

 

このブログでもそこに乗っからせていただきますが、

当ブログの結論は、山本理論を推奨します。

理由は、山本理論と呼ばれる「101の理論」について正しく理解し、その上で横川理論と比較をすれば前者の方が色々な意味で実用的だと判断できるからです。

 

山本義徳さんの101の理論とは

筋発達(筋肉を増やす)のために必要な体への刺激、ストレスとはどの程度のものなのか?を言語化した「表現の一つ」です。

山本さんが独自に考え出した理論ではなく、「こうなった時に体は筋肉を増やそうとする」という人体に起こる現象、化学反応です。「物を燃やせば二酸化炭素が出る」というのと変わりありません。

 

人体にはホメオスタシスといういわば「今の状態を保とう」とする力が常に働いているので、筋肉を増やそうとするならばそのホメオスタシスを打ち破る刺激が必要です。その刺激をどう与えるのかというと、筋肉に全力を出させることがそれに当たります。

筋肉に全力を出させるには負荷をかけること=レジスタンストレーニング=筋トレをすることが効率が良く、自分が持っている筋力の最大値を100としたならば、それを僅かでも上回る力(いわば101の力)を出せば、それが筋発達のために必要な刺激となる、というものです。

山本さんがボディビルという競技を通じて「筋肉が発達する人体のメカニズム」を研究し、やっと探し当てた答えの一つなのでしょう。

 

ポイントとなるのはこの「101の理論」において山本さんは

「トレーニングは短時間の方が良い」

とは言っているものの

「トレーニングはもっと楽にできる」

などとは言っていないということです。

 

山本さんは自身のセミナーや著書の中で、

ボディビルダーのトレーニングDVDなどを見ると2時間、3時間とトレーニングする人がいるが、その位の時間を掛けてできるトレーニングというのは、筋トレを趣味として楽しんでいる要素が多く、実際に筋発達を促すシグナルが体に入っている=ホメオスタシスを打ち破っている瞬間の除けば、残りの大部分はいわば無駄であり、ホメオスタシスを超えていない」

ホメオスタシスを打ち破る刺激を入れられるかどうかが重要で、仮にそれが出来るならばトレーニングは時間短縮が可能であり、セット数も少なくできる」

そこから転じて、

「トレーニングとは、いかにホメオスタシスを打ち破るかに集中して、短い時間で、少ないセット数でやる方が効果的だ」

という主張をしていて、それは昔から一貫しています。

 

101の理論が多くの人に広まっていくにしたがって、まるで伝言ゲームのように重要ポイントがずれていき、先ほどのホメオスタシスを打ち破る刺激を入れられるかどうかが重要で、仮にそれが出来るならばトレーニングは時間短縮が可能であり、セット数も少なくできる」という部分だけが独り歩きしているようですが

「101の理論」とは、あくまでも「ホメオスタシスを打ち破る刺激のこと」であり、「短時間・少量」は副次的に得られるメリットの一つに過ぎません。

 

簡単に、

楽に、

ちょっと集中してやれば短時間で、

少ないトレーニング量で、

・・・・・・筋肉が付く!!

101の理論に対してそんな理解をしていたり、印象を持っていたとしたらそれは大きな間違いです。

 

山本さんがトレーニング指導をするユーチューバーやフィジーカー、動画に出演してもらって再生回数を稼ごうとする人たちのトレーニング動画を見てみると、みんな1~2種目終わるころにはヘトヘトになってその場にしゃがみこんでいたり、両手を床についてヘタッてしまっている様子が分かります。

撮影という以上はある程度の演出が入るでしょうが、それでも決して楽で簡単に101が得られるものではないことが理解できます。

 

逆に言えば

それほど強烈に筋肉を刺激することができたなら、そこからさらに追い込むようなことをするとコルチゾルが分泌されてカタボリックが促進されるので、短い時間で切り上げた方が効果的である、ということになります。

 

こうして改めて書き出してみるだけでも新たな学び、勘違いしていた点の修正ができるかと思います。

 

そうすると今度は

「いやいや、山本さんは頻繁に”トレーニング時間と量を減らした方がより効果が高かった”という実例や実験結果をTwitterに載せているじゃないか」という意見が出てくるかと思いますが、それらの記事に記されているのはどれも「トレーニングの重要な部分を抽出して、あとの無駄なものは省いた」というものです。

「意図的にボリュームを時間を少なくした」というわけではないし、「トレーニングを意図的に楽なもにした」というわけでもありません。

 

かつての日本の学校教育における体育や部活において、罰ゲームのように課せられていた(”科せられていた”でも可)「うさぎ跳び」や「空気イス」や「何回もやらされる腕立て伏せ」などには意味は無いということ、

そして日本のスポーツ界で行われているトレーニングでは、依然としてそんな「昔の部活のやり方」が定着している中で、「そんなのカットした方が良い」ということを、101の理論の観点から主張しているのです。

 

この序論を踏まえて、次回に続けます。

今更ながらRIZIN、シバターvs久保優太についての感想 その二

前回に続き、シバター対久保優太について思う所を書いてみます。

 

そしてやはり前回と同様に、この問題はRIZINの前進であるPRIDEを見返していくと理解が深まるように感じます。

 

90年代後半から2005年頃まで熱狂を生み出していたPRIDEですが、「熱狂」と言ってもその熱は広範囲に伝わるものではなく、格闘技ファンたちの間での熱狂に止まっていました。

寝技を含めた総合格闘技は、何も知らない素人がチラッと見た際にどちらが攻めていてどちらが守りなのかが分かりづらく、さいたまスーパーアリーナという大会場で派手な演出の下に開催される大会であっても「マニアが観るもの」という枠を超えることができませんでした。

 

それに対して、PRIDEが始まるわずか3年前の1993年に始まったK-1は「ヘビー級選手たちのキックボクシング」でした。立ち技だけの試合なので素人にも分かりやすく、体重100kg前後の大きな選手たちの試合はテレビ映りも良かったこともあり、「これまで格闘技なんて興味もなかった人たち」を取り込むことに成功しました。

K-1もPRIDEもその当時はフジテレビでゴールデンタイムに番組放送されていましたが、視聴率が高かったのはK-1の方です。

 

大会を重ねていくうちにK-1は「プロ選手同士のハイレベルな技の攻防よりも、見た目のインパクトが大きい男同士の殴り合いの方が視聴率が高くなる」ということに気がつきます。当時のプロデューサーだった谷川貞治を揶揄する「谷川モンスター路線」という言葉の通り、K-1は「実力者よりも話題性重視の路線」を進むようになります。

批判も多かったモンスター路線ですが、客観的に考えればこれは正解だと言わざるを得ません。テレビ局が関わっている以上は何よりも視聴率を取ることが優先されることになります。

番組に求められるのは「お年寄りから子供まで誰にでもわかるわかりやすさ」であり、悪い言い方をすれば「バカでも分かるもの」を出すほうが優先されます。テレビなどのマスコミはマス(大衆)になればなるほど人はバカになっていくことを十分に理解していますから、「一部のマニアからのごもっともな正論」よりも「大衆にウケてお金になる間違い」を選択します。

2003年大晦日の曙対ボブサップを覚えている人も多いかも知れません。

まさにモンスター路線を象徴する試合で、瞬間的に紅白歌合戦を越える視聴率を取りました。

 

同じく2003年からPRIDEも大晦日興行を行うようになり、フジテレビがそれを放送する形を取っていましたが、PRIDEの大晦日大会は「男祭り」というサブタイトルが付けられ、その言葉の雰囲気の通り「マニア路線」を追求した対戦カードがいつも組まれていました。

しかし、2003年の曙・サップ戦があったためにPRIDEにも「視聴率のために話題性を…」という声が内外からも出てくるようになります。

 

2005年の大晦日には、今ではサマースタイルアワードの開催者となった金子賢が「スペシャルチャレンジマッチ」としてPRIDEのリングで試合をしました。この時の対戦相手はRIZINで木村フィリップに7秒でKO勝ちしたチャールズ・クレイジーホース・ベネットという下品なアメリカ人選手でした。

格闘技ファンからは全く注目されなかったこの試合でしたが、テレビ放送で最も視聴率が上がった瞬間は実はこの試合だったのです。

2005年大晦日五味隆典対桜井マッハ隼人、マークハント対ミルコクロコップ、小川直也吉田秀彦など”ものすごい対戦カード”が並びましたが、世間一般に響いたのは金子賢のチャレンジだったわけです。

 

今回も前置きが長くなりましたが

熱狂を生んだPRIDEですら「その程度」なわけですから、格闘技熱がすっかり下火になってしまった現在では特に大晦日のビッグマッチとなれば「話題性と視聴率」を稼ぎに行かなければならないことは明白です。

朝倉兄弟は確かに有名ですが、対戦カードに朝倉未来vs斎藤裕と発表されても「よくわからない」という人の方が圧倒的でしょう。

比較的安めのファイトマネーで試合に出てくれて、そこそこの格闘技経験があって、むしろ選手よりも知名度が高く、テレビに映せば手っ取り早く視聴率が稼げるという便利で使い勝手がいい人物がシバターであり、そんなシバターの対戦相手としてこれまた丁度いいところにいてくれたのが久保優太だったのではないかと思います。

 

つまり

ユーチューバーに頼らなくてはならないほど現在の格闘技は人気が落ちてしまったということ、これが今回の八百長騒動の根本であり残酷な現実だということです。

少し前にRIZINでは那須川天心堀口恭司という世紀の一戦を行いましたが、一昔前の魔裟斗対山本キッドが集めた注目度とは比較にはなりません。

 

シバターは自身もアマチュアセミプロレベルの格闘技大会に数多く出場していますし、年齢的にも格闘技バブルが最高潮だった時代を知っているはずです。そのころと比較した日本格闘技界の現状と、ユーチューバーとしてどんな内容の動画がウケるか(いかに視聴者がバカであるか)を熟知しているでしょう。

試合の勝ち負けを含め「視聴率が取れた」という結果を残せたならば、秋山ヌルヌル事件のように「謝罪をして後は何を言われてもスルー」を貫けば大丈夫=視聴率という後ろ盾がある以上大会関係者やテレビ局も表立ってシバターを批判しづらくなるということも理解していたと思います。

 

都合よく自分を利用するならこっちから利用し返してやる、とシバターは考えたんじゃないでしょうか?

今更ながらRIZIN、シバターvs久保優太についての感想

フィットネスとは無関係ですが1月中にこの件については触れておこうと思い、2021年大晦日RIZIN、シバター対久保優太について、今更ながら思う所を書いていきます。

 

問題となっている点をおさらいします。(時系列に沿っていません)

・大会数日後にこの試合が八百長であったのか?という疑惑が噴出、炎上する

・事前にシバターから久保優太に当日の試合展開についての口裏合わせがあった

・シバターは事前に決めた展開通りに試合をせず(ブック破り)、久保から一本勝ち

その他色々

といったところでしょう。

 

この問題(らしき現象?)を見ていくにあたり、参考にするべきはPRIDEです。

RIZINとは要するに「PRIDEの続き」です。

 

1997年に「格闘技の単発イベント」としてPRIDEという

格闘技大会が行われました。

当時はまだ現在のようにインターネットが普及していない時代であり、地上波のテレビ放送並びにテレビ局がメディアのトップに君臨していた時代です。

そしてアメリカでは(ネットの普及は日本と同じくまだまだでしたが)、既存のテレビ局の番組の他に、いくつものケーブルテレビや衛星放送のチャンネルがあり、pay per view=見たい番組にはお金を払って視聴するというビジネス(仕組み)が既に出来上がっていました。

WWEはこの仕組みを利用し、無料のテレビ地上波放送では中小規模大会の試合を見せ、注目のビッグマッチは視聴料がかかるという形式を90年代から定着させています。

PRIDEは当初、同じ頃に登場した「スカイパーフェクTV」という約300チャンネルもジャンルがある有料衛星放送サービスのキラーコンテンツを狙ったものとして生み出されたものでした。現在も「スカパー!」という名前で存続しています。

スカパー!のチャンネルだけでなく、90年代は何度も視聴率三冠王に輝いてた最強のメディアであったフジテレビがその放映権を取得したこともあり、PRIDEは一気に大人気イベントとなって熱狂を生み出します。

 

格闘技好きな人なら「既に誰でも知っている」と言っても言い過ぎではありませんが、PRIDEでは実際に八百長試合があったことが明らかになっています。

刃牙シリーズの作者の板垣恵介氏は「板垣恵介の激闘達人烈伝」という著書の中で、高田延彦対カイル・ストゥージョンの試合が八百長であったことを批判しています。

またPRIDE消滅後には、出場選手であったマーク・コールマンが高田延彦との試合は事前に試合展開の取り決めがあったことを公にしていますし、

同じくゲイリー・グッドリッジも小川直也との試合の前に「八百長試合をして負けてくれたらファイトマネーを増額する」という打診を電話で受け(誰が掛けてきたかは不明)、「冗談じゃない!」と断ったということを明らかにしています。

PRIDEがアメリカのラスベガスへ進出した際の五味隆典対ニックディアスの試合も八百長試合であったと言われています。

それ以外にも「テレビ的に勝って欲しい選手が優位になるようにレフェリーが動いているんじゃないか?」と思われる試合も数多くありました。

 

前置きが長くなりましたが、まず八百長について言えば

「興行である以上発生しても仕方がないこと」だというのが私の意見です。RIZINは柔道やレスリング、ボクシングのような世界共通のルールがある「競技」ではなく、「強そうな人同士を戦わせてみよう」という興行=イベントです。

競技者同士の優れた技の競い合いを見る物というよりは、より多くの視聴率や再生回数になるもの=お金になる要素を生み出すことが優先になるのは当たり前です。

 

とは言え、PRIDEにはそれでもしっかりとした「競技性」がありました。出場する選手はみんな「確かなアスリート」でしたし、ヒョードルノゲイラ、ミルコなど100kg超えのヘビー級選手がゴロゴロいました。

ヴァンダレイ・シウバや桜庭和志が活躍したミドル級もPRIDEは93kg未満の設定でしたのでやはり一般人とは比較にならない体格です。

 

シバターも久保優太もアスリートであり、久保選手はK1チャンピオンにもなっていますが、体格は一般人と同じですし、シバターも格闘技の経験と実績はあるためその辺の素人よりは強いことは確かですが、プロアスリートと呼べる体ではないことは見ればわかります。

 

そして、シバターは仲間のユーチューバーと一緒に入場、久保優太もやはりユーチューバーの妻と一緒に入場してきました。

「鈴木ゆゆうた」という人(こちらもユーチューバーですが)が「ユーチューバーは影響力を持った、ただの素人」と自信のチャンネルで話しているようですが、確かにプロ格闘家が集まるリングにどれほどの人気ユーチューバーが集まっても彼らの素人感や一般人感は目立ちます。

久保優太にはコスプレをした奥さんがリングサイドから応援をしていましたが、PRIDE時代の会場ではまずそんな光景を見ることがなかったですし、そんな光景を見ると大会そのものが安っぽくなってしまった感が否めません。

八百長試合がどうのこうのの前に、「あの時自分が熱狂的に見ていたPRIDEがここまで劣化してしまったか」という気持ちが強くなりました。

 

シバターは試合後に自ら、久保優太に試合展開について口裏合わせを打診したこと、それを自分から破って何をしてでも勝ちに行きたかったこと、RIZIN関係者たちにも一泡吹かせてやりたかったことなどを自身の動画で語っていますが、その様子はまさにグラップラー刃牙のアントニオ猪狩そのものです。

だまし討ち、急所攻撃、タップしたフリ、土下座(シコルスキーは”土下寝”)など刃牙の中でありとあらゆる卑怯な手段を使うのが猪狩ですが、それを地で行ったという印象です。

 

そしてだまし討ちで勝利したとは言え、プロのキックボクサーをフックでグラつかせるほどの打撃力があったこと、飛びつき腕十字で極め切るところまで持っていったことは事実であり、「卑怯だ」と言い切れるかは微妙です。

秋山成勲のクリームの方が明らかに卑怯です。

 

小川直也橋本真也の試合での猪木の指示による小川のブック破りも有名ですが、プロレス関係者やレスラーの間では、ブックを破った小川よりもそれに対応できなかった橋本に対して「もうちょっと何とかできなかったのか?!」という悔しさがこもったコメントが寄せられたそうですが、

久保優太に対してはまさにそんな気持ちが浮かんできました。

 

次回にもう少し続けます。