スポーツジムで働くトレーナーblog

フィットネスクラブでパーソナルトレーニングをしているトレーナーです。トレーニング関連の話、フィットネス業界の話、健康関連の情報・ニュースなどについて書いています。

「両端」で考えるステロイド

ボディビルやその他コンテストで常に上位に入るトップクラス選手達には

「もしかしてステロイドをつかってるんじゃないのか?」という疑惑の目が向けられることが多いです。

その真偽ははっきり言ってわかないのです。

使用してない人からすればいい迷惑な話ですが、使用している人がいたとしても、その人がいつどんなタイミングで使用しているか、その瞬間を目にすることは不可能に近いでしょう。

(ステロイドとは薬物でなくホルモン)

 

ボディビル系の団体が使用を禁止しているホルモン剤を使っているというのは単純に考えれば「ズルをしている」ということになります。

 

一方で、

ほぼ毎日のようにトレーニングをして、ありとあらゆるサプリメントを使って、どれだけハードにトレーニングをしても、なかなか筋肉は付かない(一般人からするとついているけど大会参加者としてはまだまだ)という現実もあるわけです。

これだけ色々やってもなかなか大会の順位が上がっていかない、、、という悩みが長く続くと「もうステロイドやるしかないのか?」という考えがよぎるというのはある意味普通の感覚と言ってもいいのではないかと思います。

当然、ステロイド材を使用したとしても、トレーニングをしなくてはいけないことは事実です。

 

アメリカのプロレスラーはプロテインを飲む感覚で普通にステロイド材を使うというような話を雑誌等で読んだことがありますが、決して「ずるい」と一言で言えるものではありませんでした。

プロレスラーになるためにはまず身体を大きくしないといけません。

そしてなった後も「大きな身体」を維持していく必要があります。

 

何年もかけてトレーニングして身体を作っていてはレスラーとして活躍するための「時間」がドンドンなくなります。

ですからできるだけ早い段階で身体が大きくなっている方がレスラーとして活動できる時間が長い、つまり長い間プロレスラーで居られるわけです。

 

ちまちまトレーニングしているよりも、自分の夢のためにはステロイド材くらい使ってでも近道を通ろうという気持ちは十分理解できます。

 

ステロイドをただのチートとして考えるか、夢を叶えるための手段として考えるか、両端を見て考えてみましょう。

両端を知ることの重要性

今日は、私が職場としているフィットネスクラブの利用者数が大変多く、自分のトレーニングのために行ったジムでも、ものすごい数の利用者でした。

ベンチプレス4台、パワーラック4台すべてが埋まっているという混み具合でした。

 

入会者の数も多いようで、フロントスタッフはほとんど入会受付業務を行っていたようです。やはり新年ということで「今年はちゃんと運動しよう」という気持ちを新たに持つ人が多いということでしょう。

新たにフィットネスクラブに入会されたという人はぜひともこの勢いを継続させてほしいと思います。

 

さて、

自分の職場としてのジムと、自分のトレーニングとして利用したジム、この二つに見られたのはまさに「両端」とも言える現象でした。

職場のジムの利用者と自分のトレーニングで使ったジムの利用者たちの「体つき」には右端と左端と言ってもいいくらいの差がありました。

 

私自身も信頼できる講師の方から習ったことなのですが、この「両端を知る」というというのは物事の本質を理解する上で非常に有効な手段となるそうです。

 

例えば(極端ですが)相撲というもので考えても

全国中継のテレビ放送に取組が映る力士たちばかりを見て相撲が「わかった気」になってはただの勘違いだそうです。(ただ単に相撲を見るのが好きというのならOK)

そういった力士たちがいる背景には「付け人歴10年以上」という下っ端の力士や、何年やってもなかなか幕内に上がれない力士が「ものすごく大勢いる」という現実があります。それを理解するには相撲部屋の稽古などを実際に観に行くということをしないとダメです。

 

フィットネス業界に置き換えてみると、例えばライザップによるボディメイク(ダイエット)などは、既にボディビルをやっている人や身体を作り込んでいる人たちから見れば「どこがボディメイクなの?」と言いたくなるものです。

それは「圧倒的にもの凄い筋肉量と少ない脂肪量」によってできた身体というものを実際に自分の目で見ているからわかることです。

 

体幹を鍛える」「インナーマッスルを鍛える」「加圧トレーニングは脂肪燃焼に効果的」というような誰しも一度は聞いたことがあるであろう言葉も、「それしか知らない人」か「それとは正反対の主張やトレーニング理論も理解している人」が発するのかによって内容は大きく異なってくるでしょう。

 

ボディメイクが流行り、ボディビルやフィジークという競技の参加者が増えているのは確かですが、それでもまだ「筋肉好きな人たちの間での盛り上がり」という一面もあるということです。

 

 

 

働き方改革とフィットネス業界③

昨日の続きです。

 

会社にしがみつく施設管理者と、その下で働く従業員の離職率があがり、アルバイトスタッフ募集を掛けてもなかなか人が集まらない、となると、どんなことが起こると考えられるでしょうか?

 

一つ考えられるのは、フィットネスクラブの月会費など料金が値上げするということです。

今年の6月から、「はがき」の料金が62円に値上げされます。

その理由は、年々手紙やはがきを出す人が減っていること+人件費の上昇による収益の悪化、だそうです。つまり売り上げが上がらない、もうけが出ないからその分を値上げして末端のはがき購入者に負担をさせているということになります。

「まず人件費をどうにか削減しよう」とか、「利用者の方への負担を極力減らそう」という発想の結果が「10円の値上げ」に出ていれば良いのですが、やはり「中で働く人たちの生活」のためにはやむを得ないということだと思います。

 

この様に「人が集まらない」+「過去に雇用した人に対する賃金をたやすく下げられない」という要因が合わさると、その負担を受けるのはお客様になってしまうので、フィットネスクラブの会費というのは値上げすることになるでしょう。

 

同時に現時点でも起こっているのは「さらなる人件費カット」です。人件費を掛けなくても収益がある程度上がる仕組み、と言ってもいいかもしれません。それがいわゆる「24時間型の無人ジム」です。大型のフィットネスクラブの出店がもうほとんど見られない反面、最低限のスタッフだけ置いて(時間によっては無人状態)いる形態のジムは2020年までに300店舗まで増やすという計画も出ているようです。

この形態であれば、人件費はさらに安くできるのでその分、お客様が負担する会費も安く済みます。24時間型のジムの会費はどこもかなり低額です。スマホの方が高いでしょう。

 

この様に、人手不足・人口減少によってフィットネスクラブというものは「料金の高額な大型クラブ」と「小型の低価格ジム」の2つに業態は分かれていくのではないかと考えられます。

どちらにもそれぞれの良さがあるわけですが、ハコを作って儲けるという発想では通用しないことだけは確かです。

働き方改革とフィットネス業界②

昨日の続きです。

人口減少と人手不足による働き方の変化によってフィットネス業界ではどんなことが起こると予想されるでしょうか?

 

まず、末端で働くスタッフの仕事量は増えるだろうと予想できます。社員スタッフ新入社員の数が減りますし、アルバイトスタッフの募集を掛けても人は集まりません。ということは既にクラブ内で働いているスタッフは正社員・アルバイト関係なく「様々な」業務をこなさなくてはならなくなることは確実です。

この現象はもうすでにフィットネスクラブでは起きていたことですが、今年から「募集を掛けても人が来ない」という現象がより鮮明になります。

バイトスタッフ達のシフト作成や売上の計算などをアルバイトスタッフが任される、なんてことも出てくるかもしれません。

 

その一方で、ますますアルバイトスタッフの働き方の自由度は高くなっていくと思われます。マクドナルドのアルバイトでも最低週2日で1週間前に働きたい日を事前申請するという店舗もあるようですが、まさにそんなように「週2日から可能」で、とにかく誰でもいいから人来てくれ!という状態になるでしょう。

(これによってまた社員の仕事量は増えるでしょう)

 

NewsPicksの佐藤留美さんの記事にもありますが、政府は今年から副業や兼業を後押しする方針ですから、筋トレ好きな人なサラリーマンや運動好きのOLさんが週2日でインストラクターやパーソナルトレーナーをやるということもあるかもしれません。

 

このように考えてくると、フィットネス業界外か新たにこの業界でなにかしようとする人は増える一方、既にフィットネス業界で働いていた人は退職していくという傾向が見られるだろうと考えられます。

 

フィットネスクラブがもともと「不動産ビジネス」として扱われ、一度ハコを作ってしまって後は何事もないように管理していればよい状態の時(バブル期)にフィットネス業界に入った人たちの多くは現在でもただの管理者にすぎず、運動指導など利用者の求めているものが提供できません。

しかし、年功序列によって給料だけは高いのです。

どの業界でもそうでしょうが、50歳を過ぎても年齢にふさわしい能力(知識や技術やその他相談するといつも良いアドバイスをくれるなど)がない人というのはどうにかして辞めてほしいと思っているはずです。

 

フィットネスクラブという場があればいいだけの「不動産」から、「運動指導やエクササイズを提供する場」になり、さらにそういった技術や資格を持った人が「何かのついでに働く場所」になり、そこに集まる人たちの「コミュニティ」になり、とその姿をどんどん変えていくのに対して、不動産管理者感覚が抜けない社員(支配人クラス)ははっきり言って必要ないのです。

ですが、給料は下げられない。定年を迎えてもどこにも行くところもなくやることもないから再雇用制度を利用します。

 

「役職」というものに対して賃金を設定してしまったために、「能力」に対する給料をしはられないことに対する社員の不満が出ることは簡単に予想できます。

 

ですから新入社員の離職率やアルバイト採用から社員になったスタッフの離職率は増えていくと思われます。

 

さらに明日に続けます。

働き方改革とフィットネス業界

2017年元日より、日経新聞一面やビジネス情報サイトでも

「今までの常識ががらりと変わるのではないか?」という主旨の記事が目立ちます。

特に大きな変化が予想されているのは「働き方」です。

newspicks.com

 

長時間労働の改善、同一労働同一賃金など、政府がはやくもガイドラインを発表している項目もあり、それに対して「実現できない」という理由を述べる記事もあります。

 

フィットネス業界、それも末端で働く多くのアルバイトスタッフや準社員スタッフには「長時間労働の規制」と「同一労働同一賃金」はぜひとも実現してほしい項目だと思われますが、様々な手法で人件費を削減する方法を編み出すことが得意なフィットネス業界のことですから、政府がどれだけ制度や方針を示しても、あの手この手で「独自のルール」を作り出しで、どうにかする、はずです。

 

十分に利益が出るだけの会員数確保がどこのクラブでもほとんどできていない現状に加えて、人口減少+人手不足(この二つも年始の新聞記事でよく見られました)が進むわけですから、会員数は伸び悩み、現場スタッフも募集を掛けてもなかなか集まらない、という状態になるのは素人でも予測できます。

 

居酒屋などの飲食店やコンビニでは、その対策としてアルバイトスタッフの時給が上がり、それでも日本人が来ないため、外国人スタッフが雇われているという状態が起きています。

さらに時給を上げるとなると、どこかでその分の人件費を削減することになるわけですから、正社員の給料(または退職金)を減額するか昇給ナシということになり、それでもだめならロボットを雇います。

これが事実上の同一労働同一賃金ということになるのではないかと思います。

 

他業界と比べて時給が安いフィットネス業界のアルバイト料も少しアップしてきている傾向ですが、「売上が飛躍的に上がっているから給料が増えている」ということではないので、うれしいことである反面、果たしで良いことなのか?という疑問も感じます。

 

日経新聞に書かれていることというのは基本的に大企業、他者に比べて給料も高い業界のことで、その世界でもこういったことが懸念され、すでに現実になっているわけですから、全社合わせても市場規模が5000億円くらいしかないフィットネス業界(コンビニ業界の方が規模が大きい)は、人手不足・人口減少・それに伴う働き方改革(しかたなしに)が起こるのは確実です。

 

具体的にどんなことが起こると考えられるか、明日以降に続けます。

年の初めに頻繁に見られるフィットネス業界の、ある傾向

新年の始まりと同時にフィットネス業界では2つのことが起こります。

「やめる人」と「社員を目指す人」がSNS上で自らの出処進退について所信表明をしたり、実際にそれに向けた行動を起こすのです。

(フィットネス業界だけではないでしょうけれど)

 

「やめる人」というのはフィットネス業界の正社員スタッフが正社員をやめるということを意味しています。

どの業界でも「新卒採用の社員の3割が入社3年以内に退職する」という統計データがあるようですが、フィットネス業界は特にこの傾向が顕著な業界だと感じます。

 

運動することが好き、または

身体を動かすことの楽しさを多くの人に伝えたいと思って入社したものの、職場のフィットネスクラブで求められることは、

より多くの入会者を獲得することや会員としての在籍者の数を増やすといったような「数字を増やすこと」と、

今いる会員さんたちが退会しないように、ずっと会員で居続けてもらうための

「おべっかと媚売り」ですから、3年もそれを続けていれば、

 

「私がやっていることは”入会して”&”辞めないで”のお願いばかりじゃないか?」

「その”お願い”をこれからもずっとやり続けていく人生なのか?」

という気持ちになるのは自然と言えば自然でしょう。

そして他にももらえる給料の額や職場の人間関係など、様々な要因が積もっていき、「よし!やっぱり自分がやりたいことをやろう!」となって退職、という流れです。

 

反対に「社員を目指す」というのはアルバイトスタッフに見られる傾向です。

社員スタッフとは異なり、アルバイトスタッフの場合は「入会者増やせ!」「会員数を増やせ!」「物販の売り上げを上げろ!」といった「数字を増やさなくてはいけないプレッシャー」はなく、現場でお客様に直接運動指導をしますから、「運動の楽しさを伝える」というやりがいは十分に感じています。

ですが、そういった充実した日々を送っていても、今度は「お金に関する不安」というものが沸いてきます。

 

この正月に一挙に再放送された「下町ロケット」というドラマでも間接的に描かれていましたが、日本という社会は「能力」よりも「役職」に対して賃金が払われます。どれだけ高い技術(フィットネスクラブで言えば中身のある運動指導ができること)があってもそれに見合った対価は支払われません。

「無能な上司の方がもらってる給料の額が多い」という矛盾がこれによって生じます。

 

ですから「大手企業への引き抜き」、「今より高いポストにキミを推薦するよ」といったドロドロの構図や、それに対する「自分の技術で世間を脅かせるんだ!」という願望がドラマになるわけです。

 

フィットネスクラブのアルバイトというのは決して高い時給ではありません。居酒屋やパチンコ屋の方が断然高給です。それだけフィットネス業界というところには多くのお金が流れていないということでもあります。

 

「やってる仕事はすごくやりがい溢れるものだけど、このままだとずっとアルバイトか・・・・」と、ある時ふと考えます。

自分の今後、結婚や世間体といったものが頭をよぎっていき、それでも当面は困らないのでアルバイトスタッフを続けますが、それでもだんだんと不安は膨らんできます。

 

そして生活の安定、もらえる金額のアップを目的として「正社員」を目指すということになります。

 

大卒で「こいつは将来有望だろう」と思って人事が採用をした人材がすぐに辞めていき、現場で必要な「労働力としてのバイトスタッフ」が社員を目指すというのは面白い構図です。

健康格差と肉体格差が明確になった2017年

昨日1月3日より、自分自身の筋トレを再開したのでいわゆる「ジム始め」でした。日本中の多くのフィットネスクラブは3日より通常営業を始めるため、利用者は非常に多く、施設内はどこも混み合うのが一般的です。

 

その最大の理由は「普段来ない人がジムに来る」ということにあります。

普段からクラブを利用し、ジムや施設利用としている人からすると、30日~翌年1月2日までの4日というのは「身体を動かさないことによるストレス」というものが溜まってくる日数なので、3日に通常営業開始となると「待ってました!」とばかりに施設に人が集まってくるのですが、

そこに「普段ほとんどジム利用をしない人達」が「ゆっくり休み時間がある正月くらい運動でもしてくるか」ということで、施設利用に訪れるわけです。

 

「いつも来る人」と「普段は来ない人」が一緒になると、「こんなに会員数がいたんだ!」と驚くくらいジムエリアが混雑します。

 

こういった時にまず感じることは「肉体格差」です。

定期的に運動に来ているか、来ていないかによってここまで人の身体は変わるのか?と思えるくらいの「ものすごい差」があります。

普段ほとんど運動しない人の身体というのはまるで「進撃の巨人」に出てくる巨人たちのような、「だらしない」と言わざるを得ない身体をしています。

 

まずお腹回りが非常に大きく張り出しています。

そして反対に、腕と脚が非常に細いのです。

そういった人たちが、日常的的にジムに来ている人の身体を見た時の反応はとても興味深いもので、一瞬ですが、まさに「肉体格差にショックを受けた」という表情をします。

「うわ~凄い身体してんな~」

「すごい筋肉だな~」

「あんな重いダンベルを使ってるのか!?」

など、実際にこういった言葉は出てこないにしても、心の声というのは面白いほど表情に出ているものだということがわかります。

 

そして「健康格差」は肌ツヤや表情にくっきりと表れます。

この背景に考えられるのはやはり「普段の食べ物の違い」や「サプリメントの摂取量の差」というものになるでしょう。

トレーニー(トレーニングを定期的に行っている人)の多くはプロテインを基本として、マルチビタミンやコラーゲン、BCAA、クレアチンなどといったサプリメントを、普通に生活費している人たちの数倍は摂取しています。

外食やファストフード店の利用は基本的にしない、または利用したとしても商品を選んで食べるようにしていますので、自分の体内に取り入れているものが違います。

 

日常的な単位で見れば非常に細かいものなのですが、長い年月をかけてこういった「ちょっとの違い」というものが、「肉体格差・健康格差」として現れます。

 

バブル期を経験し

高級レストランで高カロリーなものを好きなだけ食べ、

お姉ちゃんを侍らせながら糖分たっぷりのシャンパンを何本も開け

「朝まで飲みながらディスコで踊った」などという

「バカ丸出しの行為」を「凄いことをしている」かのように誇らしげに語っていた世代の人の身体というのはやはり「そんなカラダ」をしています。

 

その差がくっきりと明確になった2017年が始まります。