フィットネスクラブというところはその形式上、
人とのつながりが色々な場面で発生します。
飲食店などと違い、他人同士が同じ場所で運動を共有する
というのは数あるサービス業の中でも面白い形式だな、と改めて感じます。
そんな特殊性から良い面もあり悪い面もまた数多く生まれます。
会員の皆さんからクラブへ対しては毎日のようにありとあらゆるクレームが発生します。直接言いにくい場合もあるのでアンケート用紙をロッカールーム等に用意しているクラブも多いでしょう。
「室内が暑い・寒い」
「掃除が行き届いていない」
などの施設に関するクレームや
「レッスンが難しい」
「もっとこのクラスを増やしてほしい」
などのプログラムに関するクレームが多いのですが、中には
「ロッカールームにテレビを付けろ」「電子レンジをつけろ」などというわがままそのものと言ってもいいような投書もあります。
もっとも厄介(と言ってはいけないかも知れませんが)なのは現場のスタッフやインストラクターに対するクレームです。
「教え方が下手」とか「分かりにくい」というような意見や
「スタッフ側が明らかに失礼な対応をした」ということであれば、お客さんのクレームは「ごもっともなご指摘」ですが、
「そこを指摘されてもどうにもできない」という点を指摘してくるお客さんがどこのクラブにも1人や2人はいます。
最も多いのがスタッフやインストラクターの
「ちょっとした一言や言動に対するご意見」でしょう。
簡単に言えば「気にいらない態度や言葉遣いだった」ということですね。
もちろん本人に直接言えることではないですので、より立場が上のスタッフ、つまりチーフやマネージャーといった役職者のところに行って
「あの時あの人はこう言った」「こんな態度をしていた」
という報告をします。
そして”ありがたいことに”
そいうったお客様はご自身の過去の経験やフィットネスクラブに対する思い入れもそのクレームに合わせて非常に時間をかけて説明してくださることが多いです。
しかし、そのご指摘をいただくポイントが本当にピンポイント過ぎて施設側や当の本人(スタッフ側)はどうにもできないことの方が大半なのです。
実際に私が見てきた現場の例を挙げると
「頑張りましたね~!」
というトレーナーの言葉に反応された会員さんが
時間をかけてジムエリアのチーフに「あの言葉はないんじゃないのか」ということを延々とお話されていました。
今までなかなかダイエットに成功しなかったのに意識を変えて食べるものをガラリと変えたところ、体重や体脂肪が減ったというのです。
それをトレーナー(そのお客さんが頻繁に参加するスタジオプログラムの担当者)に伝えたところ、「頑張りましたね~!」と言われ、
非常に「上から目線感」を感じてしまい、腹が立ったというのです。
トレーナーの言い方やその時の表情がどんな様子だったのかということも考えられますが、「頑張りましたね!」というのは普通に考えれば誉め言葉ですし、それが「気にいらない」といわれると、一体どんな言葉が適切だったのか、非常に疑問です。
そのクレームのお客さんはどんな言葉をかけてほしかったのでしょうか?
心を見透かすことができる超能力者でもない限り、おそらくそのお客さんが納得する言葉を見つけ出すことが出来なかったと思います。
長々と書きましたが、つまり、取るに足らないクレームなわけですね。
ここで問われるのはそういったチーフやマネージャーのセンスや力量です。アルバイトの現場スタッフであれば、ことの大小を問わず、些細な問題やクレームでも上の立場のスタッフへ報告するのが基本ですが、それを役職者クラスがやってしまっては、何のための管理職なのか、ということになります。
こういったクレームを受けた際、その選別ができるチーフであれば「その場の対応」に止めておきますが、「なんでも報告マインド」のままの人の場合は高確率で、トレーナー本人までそのことを伝えに行きます。
ですが、それを聞かされても
当の本人は(前述した通り)なにもできないわけです。
チーフなどが「そういわれても対応が難しいと思うから今まで通りでいいよ」と付け加えてくれれば良い方ですが、「こんなご指摘をいただいたので」とただ報告だけしてきて対応はインストラクター自身で考えてくださいと言わんばかりのスタンスでは、次回のレッスンなどでそのお客さんと顔を合わせる時にただただ気まずくなるだけで、その気まずさを表情に出さないように無駄に気を使うことになります。
つまり、無駄な労力が増えるだけなのです。
フィットネスクラブ、スポーツクラブの役職者たちはクレームの種類を見極め、「ごもっともなご意見・ご指摘」と「指摘されても何もできない細かすぎるご意見」を選別できるようになって欲しいものです。