かなり間隔があいてしまいましたが、前回の続きです。
日本のサラリーマンの平均年収、または平均所得と比較してもお世辞にも良い給料がもらえるというわけではないのがインストラクターという仕事です。
インストラクターと言えばフィットネス業界ではそれだけで「スタジオインストラクター」の意味となり、鏡張りの部屋(スタジオ)の中でエアロビックダンスや格闘技エクササイズ、ヨガなどを指導する先生のことを指します。
我々は略してイントラと言ったり、IRと表記したりします。
前回の記事で、一般的には若くて元気な人たちがやっていそうな仕事であり、客層もそういった人たちだろうと思われるフィットネスクラブ(スポーツジム)というところが、実はもっと年齢層が高い人達が主要な客層であり、指導する先生(インストラクター)も同じように50~60代(もう少し年が若いかも知れませんが)が多いということを書きました。
単純に考えれば、ある程度の年齢になったらインストラクターを引退といいますか、その仕事を辞めて何か別の仕事か、フィットネス関係での他の業務へシフトしていけばいいのではないかと思うでしょう。
人は年齢で決めつけてはいけないし、動ける身体でいられるならば続けてしかるべきだとも言えますが、それでもインストラクターという仕事は体力勝負ですから、一般的に年齢を重ねるごとにきつくなるはずです。
インストラクターという仕事はそもそも給料が安く、その大半が正規雇用で固定給として給料が発生しているわけではなくて、今流行りのウーバーイーツのように業務委託として1レッスン当たり○○円という計算で給料(正確には報酬)が発生します。
ウーバーイーツの仕事のあり方が問題になっていますが、我々フィットネス業界人からみると「もしかしてウーバーってウチらの真似した?」と思えるくらいずっと前から業務委託として余計な手当てや社会保険などを一切払わずに、レッスン担当業務料金だけをインストラクターへ支払ってきました。今もそうです。
ですから、インストラクターとして稼ぎを増やしたければ、ウーバーで何件も何件も配達を担当するように、担当レッスンの数を増やしていくしかありません。
明らかに体力的にきついはずです。
しかしながら、多くのインストラクターたちは、辞めません。
担当レッスンの数を減らして、またはヨガなどエアロビックダンスに比べて身体を動かさなくて済むプログラムへシフトしたりしながら年齢を重ねてもインストラクターで居続けようとします。
ですから、現在ではヨガインストラクターが供給過多で余っているほど、もうみんな「○○ヨガインストラクター」の資格を持っています。
さて、その理由は何なのかというと、記事タイトルの通り「承認欲求が満たされるから」ということになります。承認欲求などと言うと堅苦しいですが、簡単に言えば「チヤホヤされる快感がたまらないから」ということです。
ZOZOの代表だった前澤さんという人が100万円を配るという企画をやっていましたが、いくらお金を稼いでも、周囲から相手にされなければ空しいものであり、注目を浴びるためにバラマキをやったわけです。
逆に言えばお金は無くとも周囲の人々から必要とされる感覚は強烈な快感で、仕事のやりがいもここにあると考えて良いと思います。
やりがい程度に収まればいいのですが、そこにどっぷりハマってしまうのが大半のインストラクターです。
スタジオという独特の空間で鏡を前に音楽をかけながらみんなで身体を動かせば、それは楽しいに決まっています。そこにわずかな数とはいえ人(客)が集まってくるというのは、自分はちょっとした人気者なのだと思わせてくれる状況です。
さらに人気が出てくれば担当のプログラムが始まる前には参加者の列ができ、整理券なども配られるようになります。
そうなると、もうすっかりイントラは芸能人気取りになります。
ライブイベント会場で開始を待つファンの元へ現場入りするアーティストのような気持ちになってしまうのは、スタジオプログラムという物自体の構造から仕方がないものでもあるのですが、自分の担当レッスンに多くの人が集まる、さらにリピーターになってくれる、そして拍手をくれてみんなでさわやかに汗をかいて、、、
というのはSNSで数千個という単位で「いいね」が付くことに等しいくらいの気持ちよさがあります。
だから、どんなに安い給料で、身体が辛くても、辞められないのです。
インストラクターという仕事をしていれば、そうやって「いいね」が集まる日が毎日続くわけです。さらに今ではまさにSNSがあり、
仕事を終えて「さあ、これからビールを飲みますよ~!みんさんお先に~」という一言とビール写真をアップすればそこにまたファン化した会員たちからのいいねと同業者からのいいねも集まってきます。
承認欲求が満たされまくりになるのです。
いつまでたっても、です。