フィットネス業界にはその年の最優秀トレーナー・インストラクターを決める「トレーナーオブザイヤー」という企画があります。
フィットネス業界のみで出回っている「NEXT」というフリーペーパーを発行している出版社の企画で、規模的には本当に小さなものです。
(この企画については明日、掘り下げていきます)
さて、そのトレーナーオブザイヤーで数年前にグランプリを獲得した某加圧トレーニングジムがひっそりと閉店していました。加圧トレーニングに関して職場の同僚と話をしていた際にふとそのジムの名前が頭に浮かび、ネット検索を掛けてみたのですが、その店のウェブサイトは既に存在が無くなり、スタッフが書き残したとみられるブログに「閉店のお知らせ」という表記がありました。
グランプリを獲得すると、NEXTの紙面で「これぞ成功者!」というような扱いでインタビューを載せてくれるため、受賞者であるトレーナー兼ジム経営者は、自信満々の「ドヤ顔」でラーメン屋のように腕組みをしたポーズで写真に写っていたことを覚えています。
加圧トレーニングやライザップの影響で「パーソナルトレーニング」というもの、そして「パーソナルトレーナー」という言葉が世間に浸透してきた感がありますが、それによってそのサービスの既存の料金体系というものにも変化が徐々に起きてきているのではないかと、このごろ感じるようになりました。
パーソナルトレーニングというものが現在のように世間一般に定着する以前はマッサージ同様に30分:3000円、60分:6000円といった時間料金が主流でした。
(現在でもそうと言えばそうですが)
この点について掘り下げることも可能ですがここでは割愛して、トレーニングの本質とはどういうものかを考えていけば、時間ごとにお金を払い、そして繰り返して都度払い形式でお金を払うという形態がどれだけおかしなものかがわかります。
トレーニングというのは基本的に「スポーツ」と同じです。一人で基本動作を反復するなどの練習が大事なのはもちろんですが、必ず指導者というものが必要で、「人から習う」とか「指導を受ける」ということが当たり前中の当り前です。
あらゆるスポーツで誰からも習わず、誰も指導の受けたことが無く、自分流のみの練習で上手くなる人など存在しません。
トレーニングというのもまさにそれと同様です。自主トレも大事ですが、トレーナーをつけてトレーニングをすることが当たり前であり、自然なことです。
本質的に、指導者が必要なものであり、さらに「定期的に継続すること」が必要です。この点もスポーツと同じです。1回の練習のみでその競技が上手くなるわけがありません。
この様に考えると、「定期的に継続をすること」と「そこに指導者がいること」が当たり前であるトレーニングというものが、1回60分6000円+税という料金形態で都度払いというシステムでお客様や利用者へ提供されることが根本的におかしいことだということがわかるかと思います。
プロスポーツ選手、例えば野球選手などが個人的にトレーナーをつける場合、「1回何分でいくら」という形式で契約することはまずありません。
数か月、1年、数年という単位で契約し、トレーニング自体も時間で区切りをつけるようなことはしません。その選手に必要なトレーニングメニューを消化するまでトレーニングを継続します。
オフシーズンにハワイは沖縄などの温かいところで選手が自主トレをする際には、そこにトレーナーを同行させて付きっ切りで同じ時間を過ごすということが当たり前です。
フィットネスクラブで人気が出て高い売り上げを記録したトレーナー達が自分の顧客を抱えて独立し、自分のジムをオープンさせるという現象が近年、ブームのように起こりましたが、料金形態は「都度払い形式」のままでいることが大半です。
すでに「月定額で4回まで利用可能」というようないわば、半分月会費制とも言える料金形態を打ち出すパーソナルトレーニングジム、加圧トレーニングも出てきていますが、本来はそちらの方が正しいお金のいただき方だと言えるでしょう。
1回いくらという形式は、パーソナルトレーニングというものがまだ目新しかったころには有効なものだったのでしょうが、現代ではそれ自体がトレーナーもお客様も疲弊してしまう仕組みになってきていると思います。